• 2026年10月7日

太もも外側の痛みや違和感・・・知覚異常性大腿神経痛について

いとうペインクリニック院長の伊藤です。

今日は、太もも外側部分の痛みや感覚異常がある場合、原因の1つとして考える知覚異常性大腿神経痛についての話をします。

知覚異常性大腿神経痛とは

1895年にRothやBernhartdが初めに報告したことから、Roth-Bernhartd症候群とも言われていますが、外側大腿皮神経の障害により大腿(太もも)の外側部に発生する疼痛や異常感覚のことを知覚異常性大腿神経痛といいます。

外側大腿皮神経の解剖

外側大腿皮神経は、太ももの前外側部分の知覚をつかさどる感覚神経です。

 

Dtsch Arztebl Int. 2023 Sep 29;120(39):655-661. doi: 10.3238/arztebl.m2023.0170.

Meralgia Paresthetica: Relevance, Diagnosis, and Treatment Christoph Scholz 1, Marc Hohenhaus, Maria T Pedro, Anne-Kathrin Uerschels, Nora F Dengler より抜粋一部変更

外側大腿皮神経は、腰神経(腰神経L2とL3の前枝)由来の神経からなり、腰神経叢をでて腸腰筋を斜めに横断した後、腸骨筋膜を貫通し鼠径靱帯の下で上前腸骨棘の1~2cm内側で縫工筋の前面を横断して大腿に向かい上前腸骨棘から膝に至るまでの大腿外側の皮膚に分布しています。

 

ペインクリニック Vol.40 No.6(2019.6)787‐795外側大腿皮神経絞拒神経症 田邉 豊 より抜粋記載

解剖学的には、鼠径靱帯部分で大腿筋膜を通過して皮下の浅い部分に出現しますが、この部分が絞扼されやすいと考えられています。

Dtsch Arztebl Int. 2023 Sep 29;120(39):655-661. doi: 10.3238/arztebl.m2023.0170.

Meralgia Paresthetica: Relevance, Diagnosis, and Treatment Christoph Scholz 1, Marc Hohenhaus, Maria T Pedro, Anne-Kathrin Uerschels, Nora F Dengler より抜粋一部変更

主な症状として

痛みや異常感覚(しびれ感、灼熱感)に加え、知覚鈍麻の併発が多いとされています。立位や歩行で症状が出たり悪化しやすいので、腰椎疾患と間違われることも多いですが、この神経は感覚神経であり運動神経ではありませんので、下肢の脱力はおこりません。

感覚障害部位は、下図に示す範囲に発生します。

https://www.nsj-official.jp/general/diseasename/06_limbs/daitaihi.html 外側大腿皮神経障害 | 一般社団法人日本脊髄外科学会 より抜粋一部変更

原因

腸骨部での衣料用品やベルトの締めつけ,日常生活動作の姿勢,肥満,妊娠や糖尿病,甲状腺機能充進症やアルコール依存などの代謝・内分泌障害、手術時の体位や手術による医原性でも発症するとされています。しかし、原因は不明なことが多く,特発性が多いとされています。

Clin Anat. 2003 Jul;16(4):309-16. doi: 10.1002/ca.10106.Lateral femoral cutaneous neuralgia: an anatomical insight L C Dias Filho, M M Valença, F A V Guimarães Filho, R C Medeiros, R A M Silva, M G V Morais, F P Valente, S M L França より抜粋一部変更

診断として以下のような方法があります。

・外側大腿皮神経の絞扼部分(上前腸骨棘の1~2cm内側の鼠径靱帯部分)を指で圧迫すると症状が誘発(チネル様徴候)されるか確認します。

・患側を上にした側臥位で,患側骨盤を45秒間圧迫して症状が改善される場合に陽性と判断され診断の参考になります(Pelvic compression テスト)。

・外側大腿皮神経部分に局所麻酔薬を投与(注射)することによって症状が消失するか確認します。(下記写真)

ペインクリニック Vol.40 No.6(2019.6)787‐795外側大腿皮神経絞拒神経症 田邉 豊 より抜粋

上のエコー画像のように、はっきりと外側大腿皮神経を描出することは、困難な場合も多いです。大腿筋膜や縫工筋の位置を目印にしながら、皮下の浅い部分に局所麻酔薬を浸潤させます。

・感覚神経活動電位(SNAP)測定や体性感覚誘発電位(SSEP)測定の有用性が報告されているようですが、必要な場合は近隣の検査可能な病院へ紹介させていただきます。

治療

・きつい下着やコルセット・ベルト着用など、誘因となっている原因がはっきりしている場合はその要因を除去します。保存的治療は神経圧迫を引き起こす要因の軽減に焦点を当てており、例えばタイトな服装やウエスト周りの締め付けるベルトの回避などが行われます。

・一般的な減量推奨に加え、理学療法で筋肉や腱の緩みと屈曲をもたらすことも有用と考えられています。

・薬物療法に関しては、鎮痛薬を中心に疼痛緩和を行います。

・外側大腿皮神経ブロックが疼痛緩和に有効な場合があります。局所麻酔薬の局所浸潤は、ステロイド投与の有無にかかわらず診断および治療の両方で選択肢となります。

その他

・高周波治療による治療報告も散見します。

保存的治療で症状が改善しない場合には、手術も検討されます。

https://www.nsj-official.jp/general/diseasename/06_limbs/daitaihi.html 外側大腿皮神経障害 | 一般社団法人日本脊髄外科学会 より抜粋

鼠径靭帯を切離するなどして神経への圧迫を解除する神経剥離術などが考慮されます。

参考文献・資料

・Dtsch Arztebl Int. 2023 Sep 29;120(39):655-661. doi: 10.3238/arztebl.m2023.0170.

Meralgia Paresthetica: Relevance, Diagnosis, and Treatment Christoph Scholz 1, Marc Hohenhaus, Maria T Pedro, Anne-Kathrin Uerschels, Nora F Dengler 

・ペインクリニック Vol.40 No.6(2019.6)787‐795外側大腿皮神経絞拒神経症  田邉 豊

・https://www.nsj-official.jp/general/diseasename/06_limbs/daitaihi.html 外側大腿皮神経障害 | 一般社団法人日本脊髄外科学会

腰下肢痛の原因はいろいろありますが、当クリニックでは、少しでも疼痛が緩和し生活の質が向上することを目標に治療を行っています。腰や下肢の痛みでお悩みの方は、お気軽にご来院ください。

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