• 2026年9月24日

椎間板性腰痛 MRI検査で椎間板に認められる高信号領域HIZ(High signal intensity zone)について

腰痛の原因はいろいろありますが、生活のQOLを低下させるような原因がはっきりしない悩ましい腰部痛を抱えられている方も多くおられます。

いとうペインクリニック院長の伊藤です。腰痛の精査でMRI検査を実施した際に、T2強調画像にて、高信号領域であるHIZ(high signal intensity zone:以下、HIZ)なる像が椎間板内に認められる場合があります。今回は、椎間板内に認められるこの高信号領域HIZについての話です。

椎間板性腰痛

椎間板性腰痛は、背骨(椎体)の間に挟まれた椎間板の変性や損傷が痛みの原因となる腰痛のことです。痛みの原因は、椎間板内や周囲で発生した炎症反応や神経への刺激が考えられています。前かがみ、座り続ける動作、体を起こす動きで痛みが強くなることがあります。基本は保存的治療です。

HIZは、椎間板性腰痛を疑う所見?

腰痛診療において、椎間板性腰痛も腰痛の原因として考えなければなりませんが、診断は、容易ではありません。椎間板性腰痛を疑う所見としては、身体所見に加えて、 MRI検査、椎間板造影検査とその後のCT検査の実施が重要であると考えられています。

MRI検査、椎間板造影検査とCT検査について

MRI検査におけるHIZ画像

腰痛症の精査の為に実施されるMRI検査は、侵襲性がなく、神経や靱帯などの軟部組織や炎症症状の有無描出に優れた検査です。MRI検査において、T2強調画像上、椎間板線維輪後方部分に高輝度変化が認められることがあります。この高輝度変化部分を、HIZ(high signal intensity zone)といいますが、この所見は、椎間板性腰痛を示唆する所見として考えられることがあります。これについては、1992年にAprillとBogdukが、MRIのT2強調画像で認められるHIZと椎間板性腰痛の関係について最初に報告しています。文献1)

腰椎MRI・T2強調画像 椎間板線維輪の後方部分にみとめられるHIZについて、参考画像を下に示しています(矢状断)。 

鮮明なHIZ(左図)不鮮明なHIZ画像(右図)

文献(1)Br J Radiol. 1992 May;65(773):361-9. doi: 10.1259/0007-1285-65-773-361.

High-intensity zone: a diagnostic sign of painful lumbar disc on magnetic resonance imaging

C Aprill , N Bogdukより抜粋記載

腰椎MRI・T2強調画像の椎間板線維輪 後方部分にみとめられるHIZについて、参考画像を下に示しています(横断像)。 

腰椎MRI・T2強調像横断像L3/4 
腰椎MRI・T2強調像横断像L4/5

文献2)臨床スポーツ医学:Vol.37, No.9(2020-9)High signal intensity zoneとToxic annular tear 手束文威,高田洋一郎,西良浩一 より抜粋一部変更

HIZの定義については、線維輪外にみられる同様の高輝度領域もHIZに含むという報告もありますし、輝度変化の程度の差を考慮したものなど、定義が報告により異なっています。私自身は、HIZとは、MRI のT2強調画像においてみとめられる椎間板線維輪内の後方または後側方部分に周囲の低輝度と区別できる高輝度領域であると理解しています。

参考文献(1)

Br J Radiol. 1992 May;65(773):361-9. doi: 10.1259/0007-1285-65-773-361.

High-intensity zone: a diagnostic sign of painful lumbar disc on magnetic resonance imaging

C Aprill , N Bogduk

椎間板の構造について

腰椎椎間板は線維輪と髄核という2層からなり,椎体と椎体の間の衝撃を吸収する構造として機能しています。正常な椎間板は、元々、血流や神経などが乏しい構造で疼痛を感じにくい特徴を有しています。

図 整形外科看護 2025 vol.30 no.1 13-14長谷川裕一より抜粋

椎間板の変性について

椎間板は加齢や機械的な負荷の増大や繰り返しによって、中心部分の髄核の水分と弾性が失われ、線維輪においては亀裂や断裂による変性が進行すると考えられています。

断裂した外側部分の線維輪は、修復過程において、炎症性の肉芽組織を形成し、同部位への神経線維の侵入などにより疾痛を自覚しやすい椎間板になると考えられています。

MB Orthop.36(9):17-24,2023 17-24 特集 実地医家は腰背部痛をどう診るか

椎間板性腰痛の診断と治療 青木 保親 より抜粋

椎間板周囲の解剖図 

参考 Pain Pract.  2025 Sep;25(7):e70062. doi: 10.1111/papr.70062.14. Discogenic Low Back Pain Wouter K M van Os , Ricardo Alvarez-Jimenez , Steven P Cohen , Milan P Stojanovic , Ricardo Ruiz-Lopez , Jan Van Zundert , Jan Willem Kallewaard より画像抜粋し内容変更し記載しています。

椎間板性腰痛の診断のための椎間板造影検査

椎間板造影検査

椎間板性疼痛が、原因と考えられる椎間板で発生しているかどうか、確認として実施される検査です。造影剤を椎間板に入れて、痛みの再現をみます。また、注入した造影剤の広がりから椎間板の変性も確認します。

検査の手順について(1例:以前勤めていた施設での方法)

事前にMRI検査を実施し、腎臓などの重要臓器の位置と刺入角度、刺入部位についてのチェックを実施します。検査当日には、点滴を留置し、検査前に抗生剤の投与を行います。患者さんには、検査台上で側臥位になってもらい、透視画像で刺入部の位置に目印をします。その後、刺入部を消毒し、清潔操作のもとで椎間板に向かって背側より経皮的に長針を刺入し(皮膚から針を刺し)、リアルタイムの透視画像で針の進行方向を確認しながら椎間板内の適正部位まで針の先端を進めていきます。その後、透視画像で確認しながら造影剤を椎間板内に少しずつ慎重に投与します。その際、痛みの誘発を確認します。椎間板内に局所麻酔薬を投与して、痛みの消失を確認することもあります。正面と側面のレントゲン写真を保存します。検査の際は、患者さんは、意識のある状態です。痛みの誘発や体調不良がないか確認しながら実施します。その後、CT検査を実施して検査は終了となります。

下の画像は、椎間板造影検査で造影された椎間板の正面と側面のレントゲンです。

造影後レントゲン正面像
 造影後レントゲン側面像

写真 臨床スポーツ医学:Vol.37, No.9(2020-9)High signal intensity zoneとToxic annular tear 手束文威,高田洋一郎,西良浩一 より抜粋掲載

上の正面像からは、2か所(L4/5・L5/S1)の椎間板内に造影剤が映り込んでいるのがみえますが、椎間板後方への造影剤の漏出が、側面像にてL5/S1椎間板内に確認できます。椎間板造影検査を実施する場合は、普段の腰痛と類似した症状(再現痛)であるかどうかを確認することが重要です。また、造影後に局所麻酔薬を注入し、椎間板ブロックを実施することによって腰痛の消失を確認することも椎間板性腰痛が原因と考えるのに有力な証拠となります。

補足: 椎間板造影検査のデメリット・・・侵襲性があります。

本来血流の乏しい椎間板への針の穿刺となりますので、感染の危険があります。また、造影剤の投与は、腰痛を一時的に悪化させる危険がありますので、入院施設のある環境での実施が必要だと考えます。また、穿刺においては、かなり長い針を使用しますので、腎臓や大動脈を含めた組織損傷がおこりえます。

手技的に難しい検査ではありませんが、事前のMRIによる穿刺部位の決定や、事前の抗生剤投与による感染症予防、悪化した際の対応が可能など、設備が整った中での検査が安全です。クリニック単位で気軽に実施する検査ではないと考えています。必要な場合は、近隣にて実施可能施設を紹介します。

椎間板造影検査実施後のCT撮影

椎間板造影検査の後に実施されます。

CT検査は、骨の形や変形、石灰化など構造を詳しくみる検査ですが、注入された造影剤によって、詳細に椎間板の変性をみることが可能となります。

MRI検査 T2強調画像で認められたHIZ部分に対応する椎間板造影後CT検査での線維輪断裂像を以下に示します。

写真 臨床スポーツ医学:Vol.37, No.9(2020-9)High signal intensity zoneとToxic annular tear 手束文威,高田洋一郎,西良浩一 より抜粋一部変更

MRI T2強調画像でHIZがみられる黄色線囲い部分と一致する部分に、椎間板内に穿刺針で投与した造影剤の漏出像が向かっている(黒矢印)のが認められると思います。

椎間板内の肉下組織について

画像 臨床スポーツ医学 39(3): 272-276, 2022.272-276 椎間板性腰痛の放射線学的特徴 – toxic annular tearとhigh signal intensity zone  手束文威 より抜粋一部変更

椎間板手術が実施された症例をみると、椎間板造影後、レントゲン側面像にて椎間板の後方への造影剤の漏出が確認できます。造影後CT検査の横断像では、後方の線維輪断裂像がはっきりと認められています。同部位の椎間板変性部分の術中内視鏡の写真からは、発赤した炎症性肉芽組織が確認できます。

HIZと造影後CT撮影による線維輪断裂像の一致度について

文献(4)より報告された内容をもとに話をします。

報告内容

2014~2020年の間で、施設内で椎間板性腰痛と診断され、局所麻酔下に全内視鏡下thermal annuloplastyが実施された患者23名(男性17名,女性6名)、合計38椎間データをもとに、HIZ画像と造影後CT検査の造影剤の漏出の仕方(3分類)との間での一致度について調べています。

はじめに

造影後CT検査の造影剤の漏出の仕方について、以下のように断裂像を3つに分けています。

造影後CT検査による線維輪断裂像分類について

写真 臨床スポーツ医学 39(3): 272-276, 2022.272-276 椎間板性腰痛の放射線学的特徴 – toxic annular tearとhigh signal intensity zone  手束文威 より抜粋

本文中には3分類で分けたとしか記載はありませんでした。diffuse typeについては、陽性とはみなさず、toxic tear type とcombined typeに限って陽性と評価するとしています。

一般に、椎間板の変性が高度に進んだとされるようなdiffuse  typeのようなタイプは、造影剤の後部への漏出が認められることもありますが、明らかに椎間板内の変性が高度であり、造影剤で加圧しても椎間板内での圧がかからず、疼痛の誘発も乏しいと推察します。

また、炎症性反応そのものも沈静化していると推察します。

一方、toxic tear typeは、後方部分の一部変性部に造影剤が線をなして漏出しているのがわかりますが、椎間板内構造がまだ保たれており、造影剤注入時に、後方の椎間板側に圧が十分かかっています。combined typeは、びまん性に椎間板内が造影されていますが、中央後方部分に線状に造影剤が漏れているタイプです。これは、toxic tear type に比べ、後方椎間板への造影剤投与時の圧はかかりにくいとは思いますが、やはり造影剤投与の際に、椎間板の後方部分に圧がかかり、腰痛誘発の有無に影響を与えそうです。

これらの点から、陽性と陰性と区別したものであると考えました。

注意:この研究で用いられた分類方法であり、造影検査結果をすべてこのように3つに分類するものではありません。

結果

MRI(T2強調画像)によるHIZ有の29椎間中、造影後CTで26椎間が陽性でした。一致率は、89.7%でした。一方、HIZ無の9例中、造影後CTで陰性となったのは8椎間で、一致度は、88.9%でした。HIZの有無は、造影後CT検査結果と高い一致率を示す結果となっています。侵襲性の高い椎間板造影検査を実施しなくとも、椎間板性腰痛の原因と考えられる造影後の漏出タイプがある程度推測できる結果を示しています。

他の研究では、椎間板性腰痛患者の診断において、HIZ陽性患者の椎間板造影検査は腰痛 出現の特異度が高く、陽性的中度は 86%であったとの報告もあります。文献5)しかし、無症候性患者にもHIZがある程度の頻度でみられるとの報告もあります。腰痛のある群でHIZを認める椎 間板の72.7%に椎間板造影で再現痛を認め、一 方で、腰痛のない群のHIZを認める椎間板の69.2% においても椎間板造影で再現痛を認めたとのことです。文献6)

補足・・・陽性的中度とは、陽性と出た人の中で、本当に病気や異常がある人の割合です。

特異度が高い検査とは、病気がないのに陽性と出ること(偽陽性)が少ないことを表します。特異度が100%の検査の場合、検査で陽性と出た場合は、100%陽性と断定できます。

院長のHIZに対するとらえ方について

椎間板性腰痛の診断は難しいです。椎間板性腰痛を疑って実施される椎間板造影検査は、侵襲性のある検査で、クリニックで簡単に実施できる検査ではありません。侵襲性がない分、MRI検査は、実施に対するハードルは低くなります。ブロックや内服薬の治療に抵抗性であった場合、椎間板性腰痛を疑って手術可否について近隣病院に紹介するか否かを考慮する際に、T2強調画像上のHIZの有無は、意味のある所見の1つであると考えています。

追記

必ずしもHIZが認められた場合は、全て椎間板性腰痛といえるわけではありませんので誤解のないようお願いします。椎間板性腰痛の診断による椎間板手術を実施する際には、椎間板造影検査による疼痛誘発試験と造影CT検査による構造の確認が必要だと思いますが、ここでも疼痛再現性があったからといって確定とはならない場合もあります。

参考文献

1)Br J Radiol. 1992 May;65(773):361-9. doi: 10.1259/0007-1285-65-773-361.

High-intensity zone: a diagnostic sign of painful lumbar disc on magnetic resonance imaging

C Aprill , N Bogduk

2)臨床スポーツ医学:Vol.37, No.9(2020-9)High signal intensity zoneとToxic annular tear 手束文威,高田洋一郎,西良浩一

3)Clin Radiol . 2014 Jun;69(6):551-8. doi: 10.1016/j.crad.2013.12.012. Epub 2014 Mar 7.

The lumbar high-intensity zone: 20 years on I Khan , R Hargunani , A Saifuddin

4)臨床スポーツ医学 39(3): 272-276, 2022.272-276 椎間板性腰痛の放射線学的特徴 – toxic annular tearとhigh signal intensity zone  手束文威

5)Br J Radiol. 1992 May;65(773):361-9. doi: 10.1259/0007-1285-65-773-361.High-intensity zone: a diagnostic sign of painful lumbar disc on magnetic resonance imaging C Aprill , N Bogduk

6) Spine (Phila Pa 1976). 2000 Dec 1;25(23):2987-92. doi: 10.1097/00007632-200012010-00005.2000 Volvo Award winner in clinical studies: Lumbar high-intensity zone and discography in subjects without low back problems E J Carragee , S J Paragioudakis, S Khurana

無症状の患者においてもMRI T2画像にてHIZが認められることがあります。HIZの存在と腰痛の関係については議論が続いていますが、腰痛症の原因において、他の原因が見当たらない腰痛症の人にHIZが認められる場合、椎間板の変性が痛みの原因(椎間板性腰痛)となっている可能を考慮する必要があります。

腰痛の原因はいろいろありますが、当クリニックでは、少しでも疼痛が緩和し生活の質が向上することを目標に治療を行っています。腰痛でお悩みの方の来院をお待ちしております。

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