- 2026年9月6日
青年期の腰痛症 脊椎分離症の診断 スコッチテリア サイン Scotty dog sign について

いとうペインクリニック院長の伊藤です。
今回は、青年期に発症することが多い腰痛の原因の1つである脊椎分離症の診断に用いられるScotty dog sign(以下スコッチテリア サイン)についてお話しします。
はじめに
腰椎分離症とは

脊椎分離症(spondylolysis)は、腰椎の関節突起間部の骨折を示します。骨折の原因は、問われませんが、最も多いのは頻回の曲げ伸ばしに伴う腰椎の疲労骨折が原因と考えられています。頸椎を含むすべてのレベルで起こりえますが、腰椎の5番目(L5)に発生頻度が高いです。外傷性の骨折の場合は、過伸展による場合が多いとされています。関節突起間部骨折が両側で起きた場合、椎体が前方に移動する分離すべり症を発症することもあります。
症状として
腰痛が、後屈やケンプ試験といって体を立位でひねったりした場合に、誘発されることが多いとされています。
誘発試験について
分離症の確定診断に適した検査ではありません。
後屈やケンプ試験は、感度はそこそこ高い(80~90%)ですが、特異度が20%未満と低い為に、後屈やケンプ試験で痛みが出た場合に腰椎の脊椎分離症の可能性はあるものの、非定型腰痛でも同様の痛みが発生するために確定診断にはなりません。
好発年齢
青少年期(特に中学生)に発生することが多いとされ、特に過度なスポーツ活動などが原因で起こることが多いとされています。好発部位は第5腰椎(5つある腰椎の一番下)で、男児の発生が女児より多いとされています。
腰椎分離により安定性が損なわれると、椎体間にストレスが生じ、椎間板変性や椎体そのものが前方(腹側)にずれてしまうような分離すべり症が発生する場合もあります。すべりが生じる時期は50歳代以降であることが多いとされていますが、20歳ぐらいでも発生します。
治療方法
急性期は保存療法で治癒(骨癒合)することが多いですが、慢性期では骨癒合はしません。
保存療法が基本となります。
急性期であれば、原則として骨癒合を目指し、初期であれば数カ月間の硬性コルセットでの治療が行われます。その間、運動は体育も含め、すべて禁止となります。
慢性腰痛や腰痛が強い場合は、固定術など手術が考慮されます。
但し、分離症が慢性期に移行して分離したままであっても、必ず腰痛が残存するということではありません。多くの場合、成人になると無症状のことが多いです。無症状であれば、とくに制限なくスポーツを行うことができます。
腰椎の脊椎分離症の画像診断について

文献1)より画像抜粋一部変更
画像は腰椎の5番目の腰椎の分離症を示しています。
レントゲンの白矢印の間に、黒い線状に骨折線が認められます。CT3D画像では、より鮮明に、赤矢印部分に骨折が認められます。CT横断像では左右の関節間部が骨折しているのがわかります。しかし、CTの横断像だけでは骨折線と上下関節突起の区別がつきにくい場合もあり診断が困難なことも多いとされています。
スコッチテリア サイン
腰椎の所見で椎体の後方成分がイヌ(スコティッシュ・テリア)に見えますか

図 スコッチテリア サイン(Scotty dog sign)文献1)より抜粋一部変更
椎体の横突起がイヌの顔、椎弓根が目、上関節突起が耳、棘突起が胴体、下関節突起が前足で、反対側の下関節突起が後足を表しています(上図)。上下の関節間部が首であり,ここに首輪のような骨折線が見えた場合や頭部が偏位している場合は、腰椎分離症が示唆されます。イヌの形態にこだわりがなければ,骨折線自体は正面像でも側面像でも観察可能です。
スコッチテリア

新鮮腰椎分離症の診断について
骨折発症の急性期においては、MRIを用いた骨髄浮腫像の確認が有効です。
新鮮腰椎分離症画像所見

参考文献5)より画像抜粋
上述のCT画像では、関節突起間部に骨折線が認められています。同部位のMRI画像からは、関節突起間部から椎弓根にかけて高信号領域(骨髄浮腫像)が認められ、急性期の骨折であることを表しています。
参考資料と文献
1)臨床画像 Vol.32,No.10増刊号,2016 198-199小児 放射線科医必携 単純X線写真サイン集20
Scotty dogs sign 藤井裕太
2)写真 https://www.jkc.or.jp/breeds/scottish-terrier/
スコティッシュ・テリア | 一般社団法人 ジャパンケネルクラブより抜粋
3)整形外科看護 2026 vol.31 no.6 30-32 嶋村之利
4)日本臨床スポーツ医学会誌:Vol. 31 No. 1, 2023. 86-91成長期腰痛における 新鮮腰椎分離症の特徴 Characteristics of fresh lumbar spondylolysis among cases oflow back pain during adolescence三宅秀俊,石川徹也,杉山貴哉,氷見量
5)関節外科 Vol.43 No.5(2024)33-39 腰椎分離症:最近の診断・治療の進歩 腰椎分離症に対するMRI定量評価Quantitative assessment of lumbar spondylolysis on magnetic resonance imaging 中前稔生

腰痛の原因はいろいろありますが、一番大切なことは、重篤な命に係わるような疾患を除外診断することが大切です。しかし、命にかかわらないといって、生活のQOLを低下させるような悩ましい腰部痛を抱えられている方も多くおられます。当クリニックでは、少しでも疼痛が緩和し生活の質が向上することを目標に治療を行っています。腰痛でお悩みの方の来院をお待ちしております。