- 2026年5月25日
骨粗鬆症治療薬 と 天然型ビタミンDとカルシウムについて
骨粗鬆症治療薬の投薬を行っている閉経後骨粗鬆症の女性において天然型ビタミンDおよびカルシウム補給は有効か?
伊藤ペインクリニック院長の伊藤です。今回は、骨粗鬆症治療薬に天然型ビタミンDやカルシウムが処方された場合、されない場合に比べてどのようなメリットがあるのか調べられた研究についての話となります。
はじめに
ビタミンDの働きについて
カルシウムの腸管からの吸収促進と腎臓からの再吸収に必要な脂溶性ビタミンです。血中へのカルシウムの取り込みは、副甲状腺ホルモン(骨を溶解し血液中のカルシウム濃度をあげるホルモン)分泌抑制を介して、血液中カルシウム濃度の恒常性維持に重要な役割を果たしています。そして、ビタミンDとカルシウムは、骨密度の減少を防ぎ、骨の恒常性を維持する上で相乗効果を持つとされています。
ビタミンDの代謝経路について
供給源が食品だけでなく、紫外線ばく露により皮膚でも産生される点が大きな特徴です。体内では、肝臓で25位が水酸化され25(OH)D となり、腎臓で1α位が水酸化され、活性型の1, 25(OH) 2D3(カルシトリオール)へ変換されます。

Nutrition Care 2026 vol.19 no.3(250‐253)50‐53あらためて知りたい 栄養素のキホンと最新知見 ⑨ビタミンD 大阪公立大学大学院生活科学研究科教授 桒原晶子 より抜粋
活性型ビタミンD製剤について
日本では,活性型ビタミンD製剤としては、アルファカルシドール、カルシトリオール、エルデカルシトールがあります。活性型ビタミンD製剤は、転倒リスク低減と大腿四頭筋力改善を通じて、骨密度に依存しない骨折予防効果も有するとされています。特にエルデカルシトールは、活性型ビタミンD製剤の中で骨密度上昇・椎体骨折抑制に優れています。骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版においては、「推奨」(エビデンスA)とされています。
活性型ビタミンD製剤使用においての注意点
高カルシウム血症や腎機能低下に注意する為に、血清・尿中カルシウム値と腎機能の定期モニタリングが必要です。特に、エルデカルシトールは、アルファカルシドール投与群に比べて、血中および尿中カルシウム増加の有害事象が多いことが報告されており、尿路結石の既往、腎機能低下例では特に注意が必要です。
今回は、骨粗鬆症治療薬に天然型ビタミンDやカルシウムが処方された場合、されない場合に比べてどのようなメリットがあるのかについて下記の文献を参考に話をします。
(注意:活性型ビタミンDの併用ではなく、サプリメントとしてビタミンDを摂取した場合の評価になります。)
Eur J Med Res. 2025 Mar 14;30(1):170. doi: 10.1186/s40001-025-02412-x.
Vitamin D and calcium supplementation in women undergoing pharmacological management for postmenopausal osteoporosis: a level I of evidence systematic review
Filippo Migliorini , Nicola Maffulli, Giorgia Colarossi, Amelia Filippelli, Michael emminger, Valeria Conti
本研究では、閉経後骨粗鬆症の女性で骨粗鬆症薬の治療を受けている女性において、天然型ビタミンDやカルシウムサプリメントの補給が、骨密度、骨粗鬆症の血清マーカー、病理的椎骨骨折および非脊椎骨折の発生率、有害事象、死亡率と関連しているかどうかを調査しています。
合計37件のRCT研究から得られた43,397人の患者データをもとに解析しています。
結果
患者背景
女性の平均年齢は66.4歳±5.6歳、平均BMIは25.2±1.6 kg/m2でした。
評価方法
相関係数|r|を用いて2つの間に何らかの関係があったのかどうかについて評価しています。文献中では、相関係数が、0.1 <|r|< 0.3を弱い相関関係、0.3 <|r|< 0.5を中等度の相関関係がある、|r|> 0.5を強い相関関係があるとしています。 は統計的に有意といえる値をP < 0.05として評価しています。
カルシウムと天然型ビタミンD補給による評価対象項目の相関係数と有意差P値について

毎日のビタミンD補給と消化管有害事象の間(r- 0.5;P 0.02) および死亡率(r− 0.7;P 0.03)に統計的に有意な負の関連が示さました。カルシウムサプリメントの摂取については統計的に優位な関連は認められませんでした。
骨粗鬆症治療を受けている閉経後女性では、天然型ビタミンDは消化管の有害事象や死亡率の低さと関連していました。カルシウム補給は、評価項目との関連を示さなかったと結論しています。
天然型ビタミンDの摂取について
以前の報告に、天然型のビタミンDやカルシウムのサプリメント補給は、骨折のリスクを減らさないというメタ解析結果(文献1)がありました。今回の研究は、骨粗鬆症治療薬に天然型ビタミンDやカルシウムのサプリメントを併用した場合の評価になりますが、骨密度や骨折に有意な改善を認めることはできませんでした。
院長の感想として、普通の食事が摂取できている範囲においては、カルシウムの吸収にはビタミンDがあれば十分で、この結果からあえてカルシウムの補給を行う必要はないのかもしれないと思いました。一方、天然型のビタミンDの摂取は少なくとも死亡率を減らす方向に働く結果が出ていますし、日本人はビタミンDが欠乏している人がかなり多い(文献2)ことはわかっていますので、適正な量を守って摂取することは適切であると考えています。
活性型ビタミンDの摂取について
2022年のメタ解析(文献3)でも示されているように、ビスホスホネート製剤などの骨粗鬆症治療薬に、活性型ビタミンDを併用することは、腰椎と大腿骨頸部、大腿骨近位部のいずれにおいても骨密度の上乗せ効果が認められています。この点からも活性型のビタミンDを摂取することは、骨粗鬆症治療において大切であると考えています。
しかし、活性型ビタミンD使用時には、高カルシウム血症や尿路のカルシウム結石、急性腎機能障害などの防止の為、定期的に、血中・尿中のCa濃度をチェックすることは大切になってきます。
文献1:
JAMA. 2017 Dec 26;318(24):2466-2482. doi : 10.1001/jama.2017.19344.
Association Between Calcium or Vitamin D Supplementation and Fracture Incidence in Community-Dwelling Older Adults: A Systematic Review and Meta-analysis
Jia-Guo Zhao, Xian-Tie Zeng, Jia Wang, Lin Liu
文献2:
J Nutr. 2023 Apr;153(4):1253-1264. doi: 10.1016/j.tjnut.2023.01.036. Epub 2023 Feb 3.
Determination of a Serum 25-Hydroxyvitamin D Reference Ranges in Japanese Adults Using Fully Automated Liquid Chromatography-Tandem Mass Spectrometry
Hiroyasu Miyamoto , Daisuke Kawakami , Nobuhiro Hanafusa , Tsuyoshi Nakanishi , Masaki Miyasaka , Yutaka Furutani , Yuichi Ikeda , Kyoko Ito , Tomohiro Kato , Keitaro Yokoyama , Shoutaro Arakawa , Mitsuru Saito , Tadasu Furusho , Tomokazu Matsuura , Sae Ochi
文献3:
Front Endocrinol (Lausanne). 2022 Apr 19:13:854439. doi: 10.3389/fendo.2022.854439. eCollection 2022. Efficacy and Safety of Eldecalcitol for Osteoporosis: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials Hongyan Liu , Guoqi Wang ,Ting Wu , Yiming Mu, Weijun Gu

骨の減少率は、特に閉経初期の数年間に顕著であり、閉経後骨粗鬆症(PMO)はそのままではよくなりません。また、男女とも年齢の進行とともに骨密度の低下は進行していきます。これらのことから骨密度維持のため、積極的な治療薬による介入が必要となってきます。
今回はビタミンDに関する話を中心にさせていただきました。
気になる点がございましたら、どうぞお気軽にご来院いただきご相談ください。