• 2026年3月14日

腰痛症 腰部脊柱管狭窄症の主要な原因の1つである黄色靭帯の肥厚について

いとうペインクリニック院長の伊藤です。50歳を超えるあたりから腰下肢のしびれや疼痛を発症される方は増えていきますが、これは加齢によって、脊髄の通り道である脊柱管が、椎間板の変性や、腰椎(腰骨)の変形、黄色靭帯の肥厚などで狭窄してくることで発生するとされています(腰部脊柱管狭窄症)。

下図1

腰椎(腰部分)の解剖 図1

図抜粋 整形外科看護 2019 vol.24 no.6 (533)腰部脊柱管狭窄症 宮﨑正志

椎間板は膨隆だけでなく、厚みも減少(加齢で背が縮む原因の一つ)していきますが、椎間板の厚みがなくなれば他の部位に荷重がかかることとなり他の部分での変形も進行していきます。

腰椎を支える靭帯について 図2

図 2025 vol.30 no.1 (13) 整形外科看護 長谷川裕一 より抜粋 一部変更

 腰椎(腰の骨)は各種靭帯に支えられます。前縦靭帯、後縦靭帯により脊柱管の前方(腹側)は、強固に支持されています。脊柱管の後方(背中側)には棘上靭帯、棘間靭帯、黄色靭帯があり椎間関節とともに後方部分を支持しています。

体重の8割は前方の椎体が支えられ、2割は後方で支えられています。

今回は、腰部脊柱管狭窄症の主原因の1つである黄色靭帯肥厚がどのように発生するのか、 靭帯肥厚の発生メカニズムについて日本の論文(2019年)がありましたので、内容について紹介します。

初めに

以前の報告で、手術を受けた患者さんから採取した肥厚した黄色靭帯を調べると、マクロファージ(白血球の1つ)の浸潤や、炎症性サイトカイン(炎症に関与する体内の化学物質)の発現上昇などの特徴が認められることが報告されています。また、他の研究において、腰椎の不安定性を認めない患者群と比較して、腰椎不安定性を認める患者群では黄色靭帯が有意に肥厚していることが報告されています。しかし、黄色靭帯の肥厚がなぜ発生するのかは、はっきりしていませんでした。

参考文献

・Spine(Phila Pa1976). 2001;26:E492-495:Quantitative analysis of transforming growth factor-beta 1 in ligamentum flavum of lumbar spinal stenosis and disc herniation. Park JB, Chang H, Lee JK

 ・J Spinal Disord. 1995; 8 :126-130:The effect of mechanical stress on hypertrophy of the lumbar ligamentum flavum.  Fukuyama S, Nakamura T, Ikeda T et al

そこで、なぜ、黄色靭帯が肥厚するのかについて、今回紹介する論文においては、人間を実験台にすることはできませんので、マウスを使用して、黄色靭帯が肥厚するにはどのような条件が必要であるか検討し報告しています。

初めに黄色靭帯に屈曲進展のストレス刺激を与えていますが、腰部に屈曲進展のストレスを与えた結果については、中等度の黄色靭帯の肥厚モデルを作成することができました。しかし、重度の黄色靭帯の肥厚モデルをつくることはできませんでした。(下図1)

画像1:ヒト黄色靭帯の肥厚の程度を表しています。(MRI T2強調画像)
図1 黄色靭帯に刺激(ストレス)を与えただけでは、黄色靭帯の高度な肥厚(コラーゲンの割合の増加と高度な肥厚)は認められなかったことを示しています。

次に、マクロファージの存在に着目し、微細な傷を黄色靭帯に与え、マクロファージを黄色靭帯に集積(浸潤)させています。

結果として、微細な傷を与えていない群と比較し黄色靭帯の肥厚、コラーゲンの割合が増加していることを確認しています(結果として高度な黄色靭帯肥厚を再現できた)。

(下図2)

図2 微細な傷を与えると、マクロファージが集積し、黄色靱帯が肥厚(コラーゲンの割合の増加と肥厚)するのが認められた。

これらの結果から、黄色靱帯の肥厚には、機械的な刺激に加え、細かな傷によるマクロファージの集積が重要であると考察しています。

マクロファージとは

図 電子顕微鏡 Vol.22,No.2(1987)マクロファージ細胞骨格の立体微細構築 一走 査電 子顕微鏡 による解析一 山口淳二,斎 藤卓也,豊 島 哲 より抜粋

 

マクロファージとは、白血球の1つです。死んだ細胞や、体内に生じた変性物質、外傷炎症の際に生じた異物捕食して体内で消化します(体内の異物除去を行う清掃屋さんです)。

院長の感想

背骨の前方組織である椎間板の変性やすべり症のような腰椎の前方組織の不安定な状態は、背骨の後方組織に対し、ストレス(過剰な負荷)と微細な損傷を増加させ、マクロファージの集積を引き起こします。結果として、背骨の後方組織である椎間関節の変性や黄色靭帯の肥厚を引き起こし、腰部の脊柱管狭窄症を後方より進行させることが連想できます。

たいへん興味深い論文であると思いました。

参考文献 J. Spine Res. 10:1275‒1281, 2019 The Pathomechanism of Ligamentum Flavum Hypertrophy Takeyuki Saito, Hirokazu Saiwai, Akinobu Matsushita, Mitsumasa Hayashida, Kenichi Kawaguchi, Katsumi Harimaya, Yasuharu Nakashima, Seiji Okada

引用した画像1、図1、図2は、一部変更しています。


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