- 2026年4月14日
水中運動のすすめ 腰痛の患者さんへ
いとうペインクリニックの院長の伊藤です。今回は、腰痛患者さんの水中運動の効果についての話をしたいと思います。水中運動は、浮力によって股関節や膝などにかかる荷重を軽減(運動時の痛みを軽減)し、水の抵抗が、全身の筋肉を鍛えるのに好都合であると言われていますが、水中運動の有効性を示した論文について紹介したいと思います。
JAMA Network Open. 2022Jan7;5(1):e2142069. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2021.42069
Efficacy of Therapeutic Aquatic Exercise vs Physical Therapy Modalities for Patients With Chronic Low Back PainA Randomized Clinical Trial
Meng-Si Peng , Rui Wang , Yi-Zu Wang , Chang-Cheng Chen, Juan Wang, Xiao-Chen Liu , Ge Song, Jia-Bao Guo, Pei-Jie Chen, Xue-Qiang Wang
3か月以上継続する腰痛(慢性腰痛)をもった人において、治療的な水中運動を行ったグループと物理療法(経皮的電気神経刺激と赤外線熱療法)を行ったグループ間の腰痛軽減効果を比較した論文です。
実施された慢性腰痛を持つ113名を対象としたこの無作為化臨床試験では、3か月間、治療的な水中運動と物理療法(電気療法と温熱療法)をそれぞれ行った群の間で、RMDQ(ローランド モリス ディスアビリティ クエスチョネア;日常生活が、腰痛によってどのぐらい影響を受けているかをみる為の質問票)にどのような変化がもたらされたかの評価を行っています。(下図)
その他に、痛み、運動機能、生活の質、睡眠の質、精神状態に差があったかの評価も行われています。

結果
RMDQ(ローランド モリス ディスアビリティー クエスチョネア:慢性腰痛の人の日常生活の困りごと(障害の程度) を評価するための質問票;24点満点で高いほど障害が強いことを表す)の点数は、3か月後、両グループでともに低下が認められましたが、2つのグループ間の比較においては、水中運動グループ群でより低い値をとったことが示されました。

その他の評価において
治療中に水中運動のグループでは、物理療法グループよりも腰痛を経験した人が少なかったとあります。
また、痛み、運動機能、生活の質、睡眠の質、精神状態についても評価されていますが、これらにおいても、水中運動グループ群では、物理療法グループ群と比べより改善される結果を示しています。
そして、治療後の持続効果についてですが、6か月後と12か月の追跡期間で、治療的水中運動は物理療法よりも効果が持続し12か月後も有効であったことも示されました。
本試験の結果は、慢性腰痛を持つ人に対して治療的な水中運動が効果的な治療であることを示唆しています。
院長の感想
参加者の年齢が比較的若かったのですが、より高齢者が参加した場合において、水中の運動が3か月間完遂できるかの疑問が残りました。2つの治療比較ですが、水中運動が能動的な治療であるのに対し、物理療法が受動的な治療である点が、2つのグループで差がついた要因の1つだと思います。しかし、少なくても水中運動は、慢性腰痛患者さんの生活の質の向上には有効であることは示されています(物理療法も効果はありました)。
他の論文でも水中運動の有効性を示した論文報告はいくつもあります。まずは、水につかること、可能なら水中ウオーキングからでも始めることが大切であると院長は考えています。
参考文献)
JAMA Netw Open. 2022 Jan 7;5(1):e2142069. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2021.42069
Efficacy of Therapeutic Aquatic Exercise vs Physical Therapy Modalities for Patients With Chronic Low Back PainA Randomized Clinical Trial
Meng-Si Peng , Rui Wang , Yi-Zu Wang , Chang-Cheng Chen, Juan Wang, Xiao-Chen Liu , Ge Song, Jia-Bao Guo, Pei-Jie Chen, Xue-Qiang Wang

痛みに対して、ブロック注射や鎮痛薬は万能ではありません。
ペインクリニックで治療を行っても、良くならない患者さんもおられます。痛みが再燃し良くならない場合、安易にブロック注射と鎮痛薬のみに頼ることなく、継続的に実行できる運動や食生活や生活環境を見直すことも大切になってきます。特に慢性疼痛は、完全に痛みをゼロにすることが困難な場合が多く存在します。痛みにとらわれすぎたり、イライラしたり落ち込んでしまうと痛みには悪影響を与えます。これぐらいの痛みならば、日常生活何とかやっていけるとか、痛みの軽減で近所の買い物ができるようになった、立ち上がるのが以前より楽になったなど、個人個人で目標をもって、改善点を増やしていくことが大切であると考えています。