- 2026年4月30日
痛風発作:痛風発作時の治療方法とどの程度血液中の尿酸値を下げれば沈着した尿酸結晶を減らすことができるのかについて
いとうペインクリニックの院長の伊藤です。厚生労働省が毎年行っている「国民生活基礎調査」の令和4年(2022)の調査によると、現在、痛風の治療で通院している患者総数は約130万6千人(男性123万6千人、女性7万人)であり、高尿酸血症の患者数は、約1,300万人と推測されています。当院でも痛風発作で患者さんが来院されますので、当院での治療内容について簡単にご説明し、痛風発作後の血中尿酸値のコントロールについての話をしたいと思います。
はじめに
痛風発作とは:高尿酸血症が持続すると関節内に尿酸ナトリウムの結晶が析出します。そして、白血球という細胞が活性化し、急性炎症(急性関節炎)による疼痛が生じた場合を痛風発作といいます。

尿酸ナトリウム結晶左図はλ軸に垂直な方向、右図はλ軸に平行な方向で撮影
Lancet. 2021 May 15;397(10287):1843-1855. doi: 10.1016/S0140-6736(21)00569-9. Epub 2021 Mar 30. Gout Nicola Dalbeth, Anna L Gosling, Angelo Gaffo, Abhishek Abhishekより抜粋
痛風の発生場所について
通常,1 カ所の関節に発症する単関節炎で,母趾基関節(母趾の付け根部分)に初発で6 割、全経過中では9 割が発症するとの報告があります。母趾以外では、他の足趾や足関節、膝関節なども好発部位で、手指関節、手首関節、肘関節などにも発症することがあります。
痛風の経過について
痛風発作はしばしば早朝に出現し、数時間もすると局所の著明な発赤腫脹が出現し、激しい疼痛を伴います(図1)。炎症性サイトカインの作用で発熱や悪寒などの全身症状も生じることもあります。痛風発作は、予兆の出現からピークまでが極めて短時間(12 時間程度)であることが特徴ですが、2~3 週間ほどで自然に軽快します。ただし、無治療の場合、最初の3日間は、疼痛が軽減せず継続し、7日後も痛みが続くとされています。
痛風発作は最初1~2 年に1 回程度の頻度で発症する単関節炎で、非発作期には全く無症候となります。といっても、そのまま高尿酸血症を放置すると次第に発作の間隔が短くなり、ついには前の発作が完全に治まらないうちに別の関節に新たな発作を繰り返す多発性関節炎となり、非発作期でも痛みが持続する慢性痛風に進行していきます。慢性痛風では,痛風発作を繰り返す関節などに痛風結節が出現することがあります(図2)。またこの時期には,尿路結石や腎機能障害などをしばしば合併します。尿路結石については痛風発作に先行して発症することもあります。

図 日本臨牀82 巻6 号(2024-6) 907-911 特集:高尿酸血症2024 III.高尿酸血症の臨床高尿酸血症の治療薬物療法 痛風発作治療薬 大山博司 より抜粋
発作時は、患部を挙上する、疼痛部分に負荷がかからないようにする、冷やすなどが疼痛の対処療法としてあげられます。後、禁酒も大切です。
痛風発作治療の第一の目標は、迅速に関節炎を消退させてQOL(生活の質)の 低下を最小限にすることにあります。
参考文献
1)日本臨牀82 巻6 号(2024-6) 907-911 特集:高尿酸血症2024 III.高尿酸血症の臨床高尿酸血症の治療薬物療法 痛風発作治療薬 大山博司
2)Am J Med. 1987 Mar;82(3):421-6. doi: 10.1016/0002-9343(87)90441-4.
Asymptomatic hyperuricemia. Risks and consequences in the Normative Aging Study
当院での治療
問診⇒視診⇒透視下疼痛部位レントゲン撮影・血液検査(尿酸値や炎症症状をチェック)
⇒治療
・ステロイド+局所麻酔薬の注射
痛風発作時の痛みに対して疼痛緩和の為に行うこととして注射可能と判断した場合は、ステロイドと局所麻酔薬を疼痛部位に注射(透視撮影下でピンポイントに薬を注入)します。
・内服薬の処方
疼痛がかなり強い場合は、プレドニンなどのステロイド内服を考慮しますが、まずはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬NSAIDs:ナプロキセチン(ナイキサン🄬:初回600㎎、その後1回300㎎1日2回)、ロキソニンやジクロフェナクなど)を胃粘膜保護剤とともに処方します(ただし、NSAIDsは腎機能障害がある人には使用を控えます)。
痛風発作予防のため、コルヒチンを少量(0.5㎎)併用します。
コルヒチンの作用機序ですが、痛風発作の原因となる白血球が関節内の尿酸に作用するのを抑え、痛風発作を抑制します。
生物学的製剤(海外)
白血球遊走阻止やインターロイキン(interleukin:IL)-1 産生抑制が作用機序であると分かってきたため、IL-1 をターゲットにした生物学的製剤も痛風関節炎に試されているようですが、日本では承認されていません。
疼痛が緩和した後に血中の高尿酸値を低下させるための内服薬の処方を行います(時に少量から同時処方します)。
尿酸値の目標値について
尿酸の生体内での溶解度は6.7 mg/dL 前後であり、これを超えると尿酸ナトリウム 結晶の析出が起こるとされています。高尿酸血症は痛風発症の必須条件で、血中の尿酸値が高いほど、また高尿酸血症の期間が長いほど痛風発作を発症する頻度は高くなります。
血中の尿酸値が9 mg/dL 以上では、その後5 年間に痛風発作が生じる可能性は20%以上に上昇するという報告もあります。痛風発作には、高尿酸血症以外に年齢、肥満、高血圧、高コレステロールレベル、アルコール摂取がリスク因子として挙げられています。
「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版(2018年)およびその追補版(2022年)」によると痛風結節がある場合も含めて、尿酸値6mg/dL以下にするのが望ましいと記載されています。
また、高尿酸血症は、痛風発作のみでなく尿路全体の結石の原因になりますので、尿酸値が8.0㎎/dl以上の場合は、尿酸値を下げる治療をお勧めしています。
参考文献
Am J Med. 1987 Mar;82(3):421-6. doi: 10.1016/0002-9343(87)90441-4.
Asymptomatic hyperuricemia. Risks and consequences in the Normative Aging Study
尿酸を下げる薬剤については、大きく尿酸生成抑制薬と尿酸排出促進薬があります。以下に尿酸値を下げる薬を紹介します。
尿酸生成抑制薬・・・まずは治療としては、尿酸生成抑制薬を少量から開始します。
・アロプリノール(アロプリノール錠🄬50㎎・100㎎)・・・プリン型キサンチン酸化還元酵素阻害薬であり、適応疾患は、高尿酸血症・高血圧を合併した痛風となっています。
尿酸が生成するのを防いでくれますが、アロプリノールは腎機能低下を抑制する可能性があるとの報告もあります。
メルカプトプリンまたはアザチオプリンとの併用は、骨髄抑制などの副作用が増強されるため禁忌となります。また、薬剤過敏性過敏症の注意が必要です。投与中に皮疹が認められた場合は、すぐに薬剤を中止する必要があります。
通常100㎎/日で開始しますが、腎機能が低下している場合は、投与量の減量が必要です。
以下に高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版2022年追補版より抜粋した推奨使用量を示します。
| 50ml腎機能 | アロプリノール投与量 |
|---|---|
| Ccr > 50ⅿL/分 | 100~300mg/日 |
| 30mL/分 < Ccr ≦ 50ⅿL/分 | 100mg/日 |
| Ccr ≦ 30ⅿL/分 | 50mg/日 |
| 血液透析施行例 | 透析終了時に100mg |
| 腹膜透析施行例 | 50mg/日 |
Ccr:クレアチニンクリアランス
Ccr≦30ml/分;重症の腎機能障害を表しています。
・フェブキソスタット(フェブリク🄬10㎎・20㎎・40㎎)・・・非プリン型キサンチン酸化還元酵素阻害薬で、アロプリノール同様、尿酸生成抑制剤です。適応疾患は、高尿酸血症または、痛風となっています。
主に肝臓代謝の薬(胆汁からの排出経路)であるため、中等度程度の腎機能障害があった場合でも(具体的な数値として、30ml/分<Ccr≦50ml/分)用量調整は不要です。
メルカプトプリンまたはアザチオプリンとの併用は、骨髄抑制などの副作用が増強されるため禁忌となります。
・トピロキロスタット(トピロリック🄬20㎎・40㎎・60㎎)も尿酸生成抑制剤です。フェブキソスタット同様に、非プリン型キサンチン酸化還元酵素阻害薬で、適応疾患は、高尿酸血症または、痛風となっています。
尿酸排出促進薬
非選択的尿酸再吸収阻害剤
・ベンズブロマロン(ユリノーム🄬25㎎)
腎臓の近位尿細管と言う場所に働いて、尿中へ尿酸を排出促進します。
添付文書上は、痛風、高尿酸血症を伴う高血圧症となっています。高齢者は25㎎から、通常50㎎から開始し、増量していきます。
CYP2C9と言う肝臓の代謝酵素を阻害し、ワルファリンの作用が、増強する場合があり、注意が必要です。また、肝炎の発生が報告されており、少なくとも6カ月間は、定期的な血液検査が必要であると厚生労働省から勧告されています。
尿中尿酸濃度が上がると尿酸結石症が増強する為、水分摂取を多めに摂取してもらい、尿をアルカリ化するクエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物(ウラリッド🄬)6錠分3/日を同時に処方します。
その他の尿酸排出促進作用薬について
高血圧薬のロサルタンカリウム(ロサルタンカリウム🄬)(ARB)や高脂血症薬のフェノフィブラート(フェノフィブラート🄬)にも尿酸排出促進作用が報告されています。
このことから、高血圧や高脂血症の合併症がある場合の使用を考慮します。
選択的尿酸再吸収阻害剤
・ドチヌラド(ユリス🄬0.5㎎・1㎎・2㎎)
2020年に発売された新しい薬です。ドチヌラドは選択的尿酸再吸収阻害剤で、腎臓での選択的に尿酸再吸収阻害に加え、腸管での尿酸排出を阻害しないことから腎臓での尿酸排出に過剰な負荷を与えないと考えられています。
ドチヌラド2㎎/日はフェブキソスタット40㎎/日、ベンズブロマロン50㎎/日と同等の尿酸降下作用が報告されています。
尿酸分解酵素薬
・ラスブリカーゼ(ラスリテック🄬)・・・遺伝子組み換え型尿酸オキシダーゼ製剤
がん化学療法に伴う高尿酸血症に使用が考慮されていますが、アナフィラキシーショックの報告などがあり使用には注意が必要です。当院では処方しません。
参考資料
2019年改訂 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版 2022年追補版
痛風発作を発生した人の尿酸値の適正な値について
尿酸の結晶を縮小させるには
わが国では『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』(2018年)およびその追補版が2022年に発表され、痛風の治療目標は、尿酸値6mg/dL以下を目標と記載されています。痛風結節がある場合も、日本のガイドラインでは6mg/dL以下と記載されていますが、どの程度にコントロ―ルすれば、結節は縮小するのかという点については今まで明らかではありませんでした。
近年DECT(dual-energy CT)によって尿酸塩結晶を可視化できる時代となり、結晶量を体積として定量的に評価することが可能になりました。
今回紹介する研究は、痛風患者さんの尿酸塩結晶沈着物(DECTで計測)が、血中尿酸値を一定に維持した場合に、血中の尿酸値のレベルに応じてどのように結晶の大きさが1年間で変化したのかについて追跡した研究です。
Ann Rheum Dis. 2025 Jan;84(1):136-142. doi: 10.1136/ard-2024-226059. Epub 2025 Jan 2.
Relationship between serum urate and changes in dual-energy CT monosodium urate crystal volume over 1 year in people with gout: an individual participant data analysis
Brooke Kelly, Greg D Gamble, Anne Horne, Anthony J Doyle, Jill Drake, Opetaia Aati, Chang-Nam Son, Ramanamma Kalluru, Kieran Latto, Lisa Stamp, Nicola Dalbeth
痛風患者さん251人、3研究の統合データで解析されています。いずれも尿酸降下療法を用いて血中尿酸値を一定値に安定させた患者さんに対し、両足の尿酸結晶の大きさを、DECT検査を用いて大きさを測定し、1年後にも測定を行い、結晶の大きさがどのように変化したかについて調べています。
平均血清尿酸値の範囲別分類(<4.0、4.0~5未満、5.0 ~6未満、6.0 ~7未満、7.0 ~8未満、≧8.0mg/dL)で、範囲別に1年後の結晶体積が有意に増減したかを評価しています。
結果
血中の尿酸値が<4.0mg/dL(4.0未満)の群では,1年後にDECTで測定した尿酸塩結晶の体積が有意に減少し,明らかな結晶の溶解が観察されました。4.0~5.0未満mg/dLの群でも有意な減少が認められ、尿酸値が5.0mg/dL未満の群では有意に結晶体積が減少していることが示されました。
尿酸値が約5.0~8未満mg/dLの中間域で維持された患者群は、1年間の結晶体積に大きな変化はみられず,5.0~6未満、6.0~7未満、7.0~8未満mg/dLのいずれの範囲でも統計学的に有意な増減は認められませんでした。また、尿酸値が≧8mg/dL(8.0以上)と高値が持続した患者では,1年後に結晶体積が有意に増加しており、新たな結晶形成・沈着が進行していることがわかりました。
院長の感想
この研究は、どの程度尿酸値を下げればいいかについての根拠として意味のある結果を示していると考えます。研究結果からは、従来の目標である6.0mg/dL以下でも結晶を小さくするには有効ではなく、縮小させるには、5.0できれば4.0mg/dL前後まで尿酸値を下げる必要があることが示唆されています。

痛風発作は、発生から痛みのピークまでの時間が短く、痛みは激烈です。痛風発作や高尿酸血症で治療を行いたいと考えられている方をお待ちしています。
いとうペインクリニックは、あなたの痛みに心から寄り添い、快適な毎日を取り戻すためのお手伝いをさせていただきます。