• 2026年4月14日

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の成人における陽圧呼吸療法後の朝の頭痛の改善について

朝の頭痛はCPAP (Continuous Positive Airway Pressure:以下CPAP)使用で改善する?

補足:CPAP(シーパップ)は睡眠時無呼吸症候群の治療で使う装置で、主に鼻から強制的に呼吸に合わせ空気を送り込み、いびきや呼吸の閉塞を防止します。

図 フクダ電子ホームページ

 https://www.fukuda.co.jp/medical/inhome_medical/service/cpap.html より抜粋

いとうペインクリニック院長の伊藤です。当院では2026年4月2日より閉塞性睡眠時無呼吸症候群(以下SASと記す)の簡易検査を始めましたので、今回はSASについての話をしたいと思います。SASは、昼間の眠気のみならず、生活習慣病との関係が示されていますが、朝起床時の頭痛についての指摘もなされています。今回は朝の頭痛の改善が、SASの治療によって改善することを示した論文をご報告します。

Sci Rep. 2023 Sep 5;13(1):14620. doi: 10.1038/s41598-023-34896-0.

Improvement of morning headache in adults with obstructive sleep apnea after positive airway pressure therapy

Min Young Seo Min Kyu LeeMun Soo Han Jun Yoo Seung Hoon Lee

この研究は、お隣の韓国(高麗大学安山病院)で実施されています。SASのある116人の参加者が登録され、CPAP開始前に朝の頭痛の有無や眠気、ポリソムノグラフィーを用いての睡眠時脳波検査などを実施して患者背景を把握した後、参加者はCPAP治療を少なくとも3か月実施してもらい、その後の朝の頭痛や眠気などがどのようになったかについて追跡調査されています。

116名中、103名が男性で、平均年齢は50.34±10.23歳、BMIは、28.00±4.21 kg/でした。

結果

患者背景として、重度SAS患者さん(AHI:30以上(1時間当たりの無呼吸低呼吸の回数が30回以上))の方が、軽度から中等度SAS患者さん(AHI:5~30未満(1時間当たりの無呼吸低呼吸の回数が5回以上~30回未満))よりも朝の頭痛の重症度が高い(頭痛のスコアは高いほど重症を示します)結果となっています。

論文よりデータ記録を抜粋し記載

しかし、朝の頭痛の有無による脳波を用いたポリソムノグラフィーのパラメータの違いは認められないとの結果でした。下記表にて、AHI(1時間当たりの無呼吸低呼吸の回数を表す:SASの重症度を表す指標)、睡眠効率、総睡眠時間、レム睡眠の割合は、頭痛の有無で統計的な差はない(P値で判断しています)結果となっています。

論文よりデータ記録を抜粋し記載

しかし、エプワース眠気尺度スコア(数値が高いほど、眠気が強い)は、朝の頭痛のある群(10.90 ± 5.45)で頭痛がない群(8.13 ± 4.27)よりも統計的な差(P = 0.003)をもって高い結果となっています。

CPAPの効果についての結果についてですが、治療3か月後、頭痛の重症度スコアは有意差をもって低下しています。特に重症SAS患者において効果が高かったと示されています。

論文よりデータ記録を抜粋し記載 

さらに、CPAP治療後の日中の眠気の減少と朝の頭痛改善との間に相関(r = 0.503, P < 0.001)が認められたとしています。言い換えれば、朝の頭痛は日中の眠気と関連しており、CPAP使用で眠気が減少した場合、朝の頭痛の重症度も減少したということです。

論文よりデータ抜粋一部変更

ESSと頭痛改善度はともにスコアによる評価であるため、この研究ではスピアマンの相関法を用いています。rは相関係数を表し、p値は統計的に有効かどうかを表しています。

r=0.503は相関の強さを表しています。また、p<.001とは、偶然に相関係数がr=0.503になった確率が0.1%未満であることを表しています。

相関係数rとは、2変数の関係の強さを示しています。一般的に0.9以上は非常に強い相関関係があるとされ、0.7~0.9未満は強い相関あり、0.5~0.7未満は相関あり、0.3~0.5未満は非常に弱い相関、0~0.3未満はほぼ無関係とされています。

これによると、r=0.503という数字は、相関関係があったということになります。

院長の感想

上の散布図の散らばりかたからは、強い相関関係はなさそうに見えますが、解析結果では頭痛の改善度と眠気の改善(エプワース眠気尺度スコア)には相関あり(r=0.503 p<.001)の結果になっています。この研究では、重症のSAS患者にのみならず軽度から中等度のSAS患者にも朝の頭痛を訴える患者さんが相当数おり、朝の頭痛の発生には、SAS以外の要素が含まれている可能性があります。例えば、うつなどの精神疾患や高血圧などの生活習慣病や内服薬による影響など。

頭痛の強さスコアと痛みの程度の説明が、本論文から見つけられませんでしたので、頭痛のスコアと頭痛の重症度の程度についてはっきりしないのが気にはなりますが、重症のSAS患者では、CPAP使用により、軽度から中等度のSAS患者以上の頭痛の重症度の軽減(スコアの低下)が示されています。朝の頭痛の原因は、SASによるものだけではないと思いますが、この研究結果をみた場合、SASに対するCPAP治療は、朝の頭痛の改善に一役買っていることが示されているとおもいます。

補足

エプワース眠気尺度スコアとは:

日常の8つの場面ごとに「眠ってしまいそうな可能性」を点数化し、その合計点で眠気の程度を評価するスケールです。

評価するもので合計点数は24点満点となります。評価としては、0~10点 正常範囲 10/11点(カットオフ値) やや眠気が強い可能性 12~24点 病的な眠気の可能性があるとなります。

この場合、合計点は13点となり病的な眠気の可能性があるとなります。

注意:2006年の日本語バージョンでは、最後の車の運転の項目が、座って手紙や書類を書いている時となっています。

頭痛の強さの評価:

7点リッカート尺度(アンケート形式で重症度を0~6点)で評価しています。

点数と痛みの関係についての具体的な記載がなかったので詳細は不明ですが、点数0および1を確認した被験者は、朝の頭痛がないとみなしたと論文にありました。

参考文献)

Sci Rep. 2023 Sep 5;13(1):14620. doi: 10.1038/s41598-023-34896-0.

Improvement of morning headache in adults with obstructive sleep apnea after positive airway pressure therapy

Min Young Seo Min Kyu LeeMun Soo Han Jun Yoo Seung Hoon Lee

いびきが大きい、呼吸が止まっていると家人から指摘されている方、よく寝たはずなのに疲れが取れない方、実は閉塞性睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性があります。一度、当院にて検査をしてみませんか?いとうペインクリニックは、あなたの痛みに心から寄り添い、快適な毎日を取り戻すためのお手伝いをさせていただきます。

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