- 2026年8月23日
モートン病・・足の痛み
いとうペインクリニック院長の伊藤です。今回は足のつけ根の痛みで、ちょくちょく名前が出てくるモートン病についてお話しします。
はじめに
モートン病は、足底趾神経(足の裏で足趾に向かう神経)が趾のつけ根の骨である中足骨の骨頭と深横中足靱帯により絞扼されて起こる神経障害で、1876年のモートン(Morton)によって最初に報告されたことからモートン病として知られています。
解剖
下図では、足趾に行く足底趾神経が中足骨間を連結する深横中足靱帯の足底部を通過していることを示しています。

図 深横中足靭帯と中足骨と足底趾神経について
参考資料・文献
・https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/morton_disease.html
「モートン病」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる より画像抜粋一部変更
・整形外科Surgical Technique vol.13 no.6 202 712‐716モートン病 黒川紘章 より画像抜粋一部変更
原因と症状について
趾に、槌趾変形がある場合や中腰の作業やハイヒールの常用などでつま先立ちをすると、趾の付け根の関節(中足骨と基節骨の間の関節:MTP関節)付近で深横中足靭帯と地面の間で足底趾神経が圧迫され、結果として生じる神経障害がモートン病です。圧迫部の近位には仮性神経腫といわれる有痛性の神経腫が形成されることがあります。中年以降の女性に多く発症します。
槌趾変形
PIP関節(基節骨と中節骨の間の関節)の屈曲変形が進行して、MTP関節とDIP関節の過伸展が生じた趾の変形


画像資料
・https://www.almediaweb.jp/skincare-top/skincare-002/part4/03.html 足病変|糖尿病性足病変とは|角化症・肥厚爪など【看護師が行うフットケア】より写真抜粋
・https://kigyou-pt.hatenablog.jp/entry/foot-bone 【基礎から学ぶ】足の骨【解剖学】 – PTOT国試対策ー西島ゼミーより画像抜粋掲載
モートン病では、歩いて踏み込むと足の付け根に痛みが発生します。趾にビリッとした痛みが走りますが、痛みの程度は人によって異なります。足底神経の摩擦性 神経炎から悪化すると変性肥厚し、偽性神経腫を形成します。多くは第3・4趾間に生じ,次 に第2・3趾間に発症しやすいといわれています。20~50歳代 の女性に好発します。

足底趾神経の走行と圧痛点と知覚異常部位について
参考文献
・Clin Radiol. 2021 Mar;76(3):235.e15-235.e23. doi: 10.1016/j.crad.2020.10.006. Epub 2020 Nov 7.Morton’s neuroma: review of anatomy, pathomechanism, and imaging M S Mak , R Chowdhury , R Johnson より画像抜粋一部変更
・関節外科 Vol.37 No.6(2018)82-87運動器疼痛 up date足の痛み 高倉義幸 より画像抜粋一部変更
診断方法
中足骨の骨頭間の圧痛,第2・3足趾,第3・4足趾の知覚異常や放散痛から診断します。また,前足部(第1・5中足骨頭を内・外側から)を圧迫した際の疼痛の誘発やクリックの有無をみるMulderテストも有用です。

参考文献
・関節外科 Vol.37 No.6(2018)82-87運動器疼痛 up date足の痛み 高倉義幸 より画像抜粋一部変更
障害神経の足趾間に感覚障害があり、中足骨頭間足底に腫瘤部位の神経傷害部をたたくとその支配領域に疼痛が放散するTinel 様徴候(ティネルサイン)を認めることがあります。
簡便な方法として、足趾を背屈するか、つま先立ちをしてもらい、足趾に痛みが誘発される場合はモートン病を考慮します。
但し、中足骨頭・底側の痛みのみを訴える症例はモートン病と異なり、同部への機械的ストレスによる足趾屈筋腱炎なども考える必要があります。
確定診断には、MRI検査と超音波検査が有用ですが、画像ではっきりしない場合もあります。症状重視で治療を行います。


参考文献
Journal of Clinical Orthopaedics and Trauma 11 (2020) 406‐409 Morton’s neuroma e Current concepts review Maneesh Bhatia, Lauren Thomson より画像抜粋
治療について
保存療法と外科療法に大きく分けられますが、まずは保存的に治療を行います。
保存療法
・局所の安静
中足骨頭部への負荷を軽減するために、つま先立ちなどの作業肢位を見直す、ハイヒールの禁止などが必要です。
・適切な靴、足底挿板(インソール)
中足部がしっかり固定されて、靴のなかで足がずれないような靴を選択する必要があります。足底挿板(インソール)も重要です。これにより,病変部への足底圧の集中や踏み返し時の負担を軽減できます。
インソール作成
自分に合った足底挿板(インソール)作成は大切です。



参考文献
関節外科 Vol.40 No.1(2021)Morton神経腫 保存療法 殿谷一朗 西良浩一 より画像抜粋
・内服薬
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を中心とした疼痛管理を行います。
・ブロック注射

痛みが強い場合、局所麻酔薬+ステロイドの注射を行います。ブロック注射は、治療だけでなく診断にも有効です。




図 超音波エコーを用いたステロイド注射について
Clin Radiol. 2021 Mar;76(3):235.e15-235.e23. doi: 10.1016/j.crad.2020.10.006. Epub 2020 Nov 7.Morton’s neuroma: review of anatomy, pathomechanism, and imaging より画像抜粋
・運動療法




写真 運動療法
①足底腱膜のストレッチ
②腓腹筋のストレッチ
③腓腹筋・足底腱膜のストレッチ
④足底でのボール転がしなどで、下肢の筋力強化、柔軟性を高める運動を実施することも大切です。(上の写真の方法は一例です。)
参考資料
関節外科 Vol.40 No.1(2021)Morton神経腫 保存療法 殿谷一朗 西良浩一 写真は文献より抜粋
外科療法
保存療法に抵抗する場合、手術が考慮されます。
神経剥離、神経鞘腫摘出、深横中足靱帯の切離等の手術が行われます。下記中央の写真は、神経鞘腫の摘出術の写真です。



左画像:MRI モートン神経鞘腫 中央写真:背側アプローチ手術 右写真:神経鞘腫
参考文献
・J Clin Orthop Trauma. 2020 May-Jun;11(3):406-409. doi: 10.1016/j.jcot.2020.03.024. Epub 2020 Apr 10.Morton’s neuroma – Current concepts review Maneesh Bhatia, Lauren Thomson より左画像・中央写真 抜粋
・整形外科Surgical Technique vol.13 no.6 2023 40-44 モートン病 黒川紘章 より右写真抜粋

モートン病を含め足の痛みには、自分に合った靴選び、足底板(インソール)の作成などが大切です。足の柔軟性と筋力強化の運動療法も重要です。痛みに関しては、消炎鎮痛剤を中心に処方しますが、痛みが強いときには、局所麻酔薬とステロイドの注射を超音波エコーまたは透視下に実施します。保存療法で改善しない場合は手術が考慮されます。