- 2026年3月10日
打撲傷と肉離れについて
いとうペインクリニック院長の伊藤です。ペインクリニックは、痛みを緩和することを主眼においた科ですので、外傷(打撲傷)や肉離れの診断と治療は、専門的な整形外科に行かれるのがよいと思われます。ただし、痛みが強い場合などの際、当院に来院されて治療することもありますので、今回は打撲傷と肉離れの話をしたいと思います。
打撲傷と肉離れ
スポーツなどで発生する打撲傷と肉離れは別のメカニズムで発症しています。
打撲傷

コンタクトスポーツなどにより、主に太ももの大腿四頭筋の深部に存在する中間広筋の損傷による場合が多いとされています。打撲傷は、直接の外部よりの衝撃による外傷ですので、柔らかい表面より骨に近い部分が障害されやすいと考えられます。受傷した際はまずは、出血を押さえるために筋肉を緊張させる(膝を曲げて出血を抑え、固定する)方がよいとされています。

膝伸展位では筋の緊張が少なく血腫が拡大しやすい為、放置して血腫が大きくなると,筋緊張が高まり膝屈曲が制限されることになる場合もあります。筋打撲傷後は、安静固定肢位、膝屈曲120°を目標とします。
打撲傷の画像について

MRI STIR画像
打撲傷によるMRI所見ですが、左大腿前面部の大腿四頭筋の1つである中間広筋に血腫(高信号域:白くなっている部分)が認められています。
打撲後の骨化性筋炎について
強い打撲や筋肉内の出血が原因で、後日、筋肉組織内に骨のような塊が形成されることがあります。しこりを触れるようになり、動かすと痛みが生じることが特徴です。

肉離れ
筋肉が過剰に進展することによって発生する障害であり、打撲傷とはメカニズムが異なっています。肉離れは10代、20代に多く、下肢、特にハムストリングス(太ももの後ろ側の筋肉)や腓腹筋(ふくらはぎの筋肉)に多いとされています。

肉離れをしたときの応急処置は,重症度に関係なくRICE(rest:安静・ icing:冷却・compression:圧迫・elevation:挙上)です。損傷部の出血やそれに続いて起こる腫脹(浮腫)の量を減らすのに有効とされています。患部の安静を保つため,荷重歩行を制限し、必要に応じて(痛みの程度によって)数日間,松葉杖を使用することも考慮すべきです。
重症例を疑ったら早急に近隣の整形外科のある病院への紹介を行います。
RICE に加えてProtection(保護):装具やシーネなどで損傷組織を保護し、再受傷、悪化を防ぐことやOptimal Loading(最適な負荷):早期に最適な負荷をかけることで組織修復を促すことが大切であると考えられるようになっています。
肉離れの重症度評価について
2008 年に奥脇が提唱したハムストリング肉離れのMRI タイプ(損傷型)分類(以下
奥脇分類タイプ1・Ⅱ・Ⅲ)は,損傷部位によってタイプ分類して,再発せずに復帰できるおおよその期間が予測できる画期的なものです。

まずは、疼痛部分の視診と触診は大切ですが、受傷直後のストレッチ痛の確認が重症度評価に大切であると奥村は述べています。これは、患者を腹臥位にして下肢を少しずつ伸ばしていきストレッチ痛を確認するというものです。足を完全に伸展でき痛みもほとんど軽度であれば1型として応急処置を施します。そして、1型の場合は、ストレッチの痛みがなくなれば、早期からリハビリテーションを行うとしています。ストレッチ痛が明らかなものはll型以上を疑い、可能であればMRIを撮像し、損傷の程度を評価するとしています。

タイプⅠ:筋線維部(筋膜・筋間を含む)の損傷.多くのタイプⅠは理学所見に基づいて通常2週以内に再発せずに復帰可能であると述べています。
タイプⅡ:腱膜部の損傷.MRI で損傷した腱膜が十分修復したことを確認しないでスプリントを行うと、リハビリテーション中または復帰直後に再受傷するので要注意であるとしています。
ハムストリングは大腿二頭筋,半腱様筋,半膜様筋の3 つからなり、共同腱(大腿二頭筋腱)と半膜様筋腱膜の3つの腱膜が坐骨部で1つの総腱となり坐骨に付着しています。腱膜が損傷した場合,スプリントして再発しないレベルに腱膜が修復するのにほとんどの症例で6~8 週以上を要し、自覚症状,理学所見がどんなに改善しても、スプリントを許可するのは、6~8週以降にMRI で修復を確認してからとしています。
大腿二頭筋腱長頭のタイプⅡは,近位腱膜だけでなく,腓骨近くの遠位外側腱膜にも生
じることがあります。
タイプⅢ:坐骨付着部または腓骨・脛骨付着部の損傷で、ハイアスリートでは受傷後2週以内に手術的治療が必要な例があるので、すみやかにMRIで診断する必要があるとしています。


筋線維の部分的な損傷の場合はタイプ1型、腱膜損傷はタイプⅡ型、腱付着部の完全断裂はタイプⅢ型となります。
奥村分類による肉離れ後の競技復帰までの期間のおおまかな流れについては、下記のようになります

奥村の分類は、大変わかりやすく当院でも診断に利用しています。
参考文献・図引用文献
・日本臨床スポーツ医学会誌:Vol.27No.2,2019. 大腿二頭筋肉ばなれのMRI分類 原 著 Classification of the type of biceps femoris muscle strain based on magnetic resonance imaging findings 奥脇 透,中嶋耕平,半谷美夏, 福田直子,水谷有里,高橋佐江子
・Jpn J Rehabil Med 2019;56:778-783 特集より安全なスポーツ復帰をめざすリハビリテーション診断・治療 5ハムストリング肉離れ 仁賀定雄
・臨床スポーツ医学:VoL34,No.8(2017-8)アスリートの肉離れ一今,何が問題なのか一 総 論 肉離れの現状 奥脇透
・臨床スポーツ医学 Vol.33, No.9 (2016-9)スポーツ外傷一現場でどうみるか一 部位別の診かたと対処 大腿部の外傷(肉離れ,筋打撲傷)奥脇 透
・臨床スポーツ医学Vol.33, No.9 (2016-9)特集 スポーツ傷害(外傷・障害)の画像診断-X線,CT,MRI,超音波-肉ばなれ・筋傷害の画像診断 奥脇 透

いとうペインクリニックは、あなたの痛みに心から寄り添い、快適な毎日を取り戻すためのお手伝いをさせていただきます。