- 2026年8月30日
前胸部痛 モンドール病

前胸部痛の原因の診断は、緊急性や重篤度の高いものから検査されます。したがって緊急性が低いと考えられるもの、あるいは症状が軽く、重症感のない症状については、検査が実施されなかったり、原因不明としてかたづけられることもあります。
前胸部になんだか気になる軽度の痛みやしこりがある場合でも、病名を知っていれば、その後の過剰な検査を行わず済むものもあります。今回は、自然治癒することが多いモンドール病についての話となります。
モンドール病
前胸部~側胸部の皮下浅層の静脈に発生する血栓性静脈炎で良性の疾患とされています(胸部以外に、腹部や上肢にも発生する場合もあります)。モンドール病は、フランスの外科医モンドールによって1939 年に初めて報告された疾患です。
特発性(原因不明)が最も多いとされていますが、次いで乳腺の手術、筋の過伸展を含めた外傷や感染などが考えられています。
症状
皮下浅層に腫瘤を形成します。病態上、円形や球形でなく線状の索状物として蝕知されます。ただし,病変が短いこともあり、乳がんと疑われる場合もあります。主に女性に多い(中年女性に多い)とされていますが、男性にも発症します。女性は、前胸部に発症する痛みやしこりに対し、乳がんを心配する場合が多く、受診の割合が男性より多くなり、結果として割合が高いのではないかとの考えもあります。

原因は、血栓性静脈炎による血管の索状化ですが、一般的に炎症は限局的で、周囲の皮膚や皮下組織に炎症が及ぶことはなく、皮膚発赤などはあっても軽微であると考えられています。
触診
前胸部に存在する場合は、注意深く触診すれば,腫瘤は乳腺内でなく、浅い皮下に存在する索状物であることがわかります。同部の皮下静脈は体軸方向に良く発達しているため,索状物の方向は、体軸に平行であることが多いとされています。
検査
超音波エコーでは、索状物が皮下に存在する像が認められます。管状内は無エコーまたは低エコーで、カラードップラーにて血流がない所見が得られます。

モンドール病を疑っても、乳癌の可能性が除外できない場合は、マンモグフラフィー検査では、病変が乳腺内でないことが明白になりますので、有用と考えられます。
モンドール病の場合は、ほとんどの症例において無治療で問題ありません。乳腺科、皮膚科等のクリニックのホームページにはしばしば本疾患のことが掲載してあります。
前胸部以外に発生した場合もモンドール病の1例について

参考文献3)より抜粋

参考文献3)より抜粋
論文の抜粋写真からは、索状物の確認が難しいですが、前胸部以外にも発生する1例として記載しました。この症例は男性で、腹部にモンドール病が認められました。懸垂器具の使用による筋の過伸展が誘因として考えられています。
当院での経験
当院では、痛みは消失したが、ツッパリ感があり気になるとのことで来院された方がおられました。触診で、腋窩~上腕にかけて皮下直下の5㎝程度のコリコリした索状物が触れ、エコー上も血流所見なかったですが、不安とのことでしたので、近隣の病院婦人科を紹介しました。結果は、モンドール病の診断でした。後日、ご本人より安心できましたとの連絡をいただきました。
参考文献
1)臨林と研究・99巻1号(令和4年1月)96-99 一般外来診療において知っておきたいEponym モンドール病とティーツェ病 鴻江俊治
2)Kitakanto Med J 2009;59:255-258 Mondor病41例の検討
高井良樹,飯野佑一,堀口淳
3)日病総診誌 2021:17(1)87―症例報告 懸垂器具の使用による筋の過伸展が誘因と考えられた 男性発症モンドール病の1例 近藤啓介、 大倉佳宏、 山口治隆、 鈴記好博、 前田拓也、石田創士、 西條康代、 上原久典、 谷憲治

胸部の痛みはまずは危険な疾患の除外が大切ですが、多くは原因がよくわからない良性の胸痛(筋骨格系の痛み)の割合が多いとされています。今回は、前胸部痛の原因の1つとしてモンドール病についての話をさせていただきました。