- 2026年7月2日
夏休み キャンプ・ハイキング 山林や野原でのマダニには注意しましょう
マダニが媒介する感染症「SFTS」が広がってきています
ニュースで、【速報】マダニ媒介の感染症「SFTS」今年の感染者78人 過去最多だった去年の同じ時期を上回るという厚生労働省というニュースがありました。それによると、早くも「SFTS」の患者さんが昨年の76人を上回っているとのことでした。
SFTSとは
重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome: SFTS)という、主にマダニを媒介とするウイルス感染症です。2011年に中国で初めて報告され、2013年に初めての日本国内での発生例が報告されています。一時、新聞雑誌で大きく取り上げられましたが、現在は、東アジアで高い致死率を有するダニ媒介性ウイルス感染症として認知されるようになっています。 潜伏期はダニ刺咬後6 ~ 14日間で、早期診断には血小板減少や白血球減少、発熱(38 ~ 40℃)と消化器症状、CRP(C-reactive protein:体内の炎症反応を見る指標の1つ)が正常範囲にあることなどが鑑別に有用とされていますが、日本紅斑熱(典型的な発疹と刺し口の黒色痂皮)やつつが虫病(淡紅色の粟粒大から小豆大の丘疹状の皮疹が出現、日本紅斑熱より大きい刺し口:下画像)と異なり発疹を伴わないことが多く診断は難しいとされています。治療は支持療法が中心ですが、ファビピラビル(アビガン🄬)という治療薬が、2024年に日本で承認され治療の選択肢が広がりました。

画像 広島県ホームページ つつが虫病患者の刺し口と発疹の写真より抜粋
つつが虫病を媒介するツツガムシは、マダニではありません。
SFTSの確定診断には、遺伝子検出が必要で、国立感染症研究所および地方衛生研究所で検査の実施可能です。
参考資料
・治療Vol.107,No.6〈2025.5〉 745‐747 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)忽那賢志
・https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/25/hidsc-kansen-wadai-images-tutuga-fig3.html つつが虫病患者の刺し口と発疹の写真 (図3) | 広島県
いとうペインクリニックの院長の伊藤です。マダニのニュースを見て、昔、実家の飼い犬がマダニにかまれたことを思い出しました。当時、犬をつれて実家の裏山をよく散歩していたのですが、ある時気づくと、顔と耳にダニがくっ付いており、血を吸って大きくなっているのを発見しました。引き離そうとしても、がっちりと皮膚にくっついており、結局、動物病院で除去していただきました。幸いにも犬はその後の体調に問題なかったのですが、マダニが媒介する感染症はペットにも感染します。今回は、マダニについての話をします。
マダニによるSFTS感染症の広がりについて

マダニ対策、今できること|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイトより抜粋
SFTS届出症例の届出地域(2026年4月30日現在)で合計1,273人にのぼっています。
マダニに対する感染症報告は特に、西日本に多いですが、東日本にも徐々に広がりをみせており、感染者数も右肩上がりで増加しています。
ペットの犬猫も危ないです
国内の動物での感染状況の調査の結果、2024年には1年間でネコ194頭、イヌ12頭のSFTS症例が、報告されています。発生の多くは西日本ですが、最近では東日本での発生も報告されています。ネコでの発生時期は3月から5月に多く、ヒトの発生時期よりも早い傾向があるようです。冬でも発生が多く、ネコでは症状が重篤になることが報告されており、発熱、白血球減少、血小板減少、黄疸等がみられ、致死率は62.5%とされる報告もあります。イヌにおいてもネコやヒトと同様の症状が観察されています。
マダニの写真

写真 タカサゴキララマダニ刺症:兵医大医会誌(Acta Med. Hyogo.)第50巻1号 13-17 2025 虫による皮膚疾患に心を燃やした40年 夏秋 優 より抜粋
大阪にいるマダニとマダニのいる場所について

写真 大阪府下で発見されているマダニ
https://www.pref.osaka.lg.jp/o100030/iryo/osakakansensho/madanisyasinten.html
大阪府庁 ホームページ マダニ写真展より抜粋一部変更
大阪にもいろいろなマダニ(上の画像)が生息していますが、マダニは、家庭内に生息するダニと種類が異なり、山林や草地といったシカやイノシシ、野ウサギなどの野生動物が出没する環境に多くおり、民家の裏山や裏庭、畑、あぜ道、河川敷などにも生息しています。マダニは長時間(10日以上)吸血することもあります。うちの犬についていたマダニは、上画像の飽血後(血を限界まで吸った状態)の形に近かったですが、暗褐色でパンパンに膨らんでいました(上の写真のようにしぼんだ感じではなかったですし黄色くもなかったです)。
マダニが媒介する感染症について
「SFTS」のみではありません。

国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイトからの抜粋
こうやって、マダニ媒介の感染症をみるとSFTSのみならず、多くの病原体を媒介しています。マダニが活発な時期は、春から秋にかけて、活発になるようです。
マダニの一生
マダニの寿命は、1から3年程度だそうです。

出典:国立感染症研究所「マダニ対策、今できること」より抜粋
やはり、噛まれないための予防が大切になってきます。
服装(長袖・長ズボン)や蚊帳など、物理的対策と併用するとより安心です。

忌避剤(虫よけ剤)の使用では、下記の忌避剤が認められています。

マダニ対策、今できること|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイトより抜粋
「最大限の防御力」重視ならディート
生後6か月から使用できるものもあるようですが年齢制限があります。

https://www.earth.jp/saratect/safety/deet
ディートとは | 虫よけ剤サラテクト | アース製薬
「子どもや敏感肌・家族全員での使いやすさ」重視ならイカリジン

https://www.kincho.co.jp/icaridin/index.html イカリジンって何? | KINCHO より抜粋
忌避剤は、マダニの感染を完全に防ぐわけではありません、山林に入る場合だけでなく、帰ってからのチェックも大切です。

マダニ対策、今できること|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト より抜粋
肌の露出を少なくするよう注意喚起しています。
マダニに刺された場合
また、マダニに刺された際、無理に取り除こうとすると、マダニの口器が皮膚の中に残ってしまうことがあるため、刺されたまま皮膚科などを受診し、処置してもらうことが大切です。
噛まれた場合は、数週間程度体の変化に注意し、変化があった場合は、医療機関を受診することをお勧めします。
参考文献・資料
・INFECTION CONTROL 2025 vol.34 no.12(1101)9-12 SFTSの現状とICTが押さえておくべき知識 倉井華子
・Med. Entomol. Zool. Vol. 76 No.1 p.7-13 2025 DOI:10. 7601/mez.76.7
Epidemiological survey of tick bites in a dermatology clinic in Shimada City, Shizuoka prefecture from 2016 through 2023 Masako MATSUTANI, Masaru NATSUAKI,Munenari ITOH, Kazunari IToH,Teruasa MURATAl and Nobuo KANAZAWA
・https://www.pref.osaka.lg.jp/o100030/iryo/osakakansensho/madanisyasinten.html
マダニ写真展/大阪府(おおさかふ)ホームページ [Osaka Prefectural Government]
・https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/tick-borne-diseases/tick-prevention/index.html
マダニ対策、今できること|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト
まとめ

山林や野原に行く際は、マダニに噛まれないような服装や忌避剤によるスプレーの使用をお勧めします。マダニが吸血していれば、無理に引きはがさずに、皮膚科に受診することをお勧めします。噛まれたと思った場合は、数週間は体調の変化に注意し、体調に変化ある場合は、すぐに近隣の医療機関受診を受診しましょう。