- 2025年3月12日
胸部痛
胸部痛について

胸の痛みについては様々な原因がありますが、内臓の疾患(心臓や膵臓、胆のう、肺)や膠原病、悪性腫瘍(癌)などによる場合も考えられますので胸部痛がある場合、まず内臓疾患や悪性腫瘍ではないことを内科で鑑別することが大切です。
ペインクリニックで扱う胸部痛の原因となる疾患としては、以下のような疾患があります。
肋間神経痛、胸部帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛、圧迫骨折、開胸術後疼痛症候群(PTPS)、胸椎椎間板ヘルニア、胸部脊柱管狭窄症、胸椎椎間関節症、偽狭心症(頸椎症性神経根症)など |
【肋間神経痛】
肋間神経痛は疾患名ではなく、肋骨に沿う神経(肋間神経)が痛む症状を指すものです。原因となる疾患が分かるものもあれば、原因がはっきりとしない場合もあります。痛みの症状は様々で、突然、電気が走るような痛みを感じたり、ズキズキとした痛みやヒリヒリとした痛みが持続する場合があります。さらに背中から脇腹、胸の前面、場合によっては足の付け根まで痛みを感じることもあります。原因と考えられる疾患としては胸椎椎間板ヘルニア、胸部脊柱管狭窄症、胸部の骨折や腫瘍、開胸手術の影響、帯状疱疹後神経痛などがあり、ストレスによって発症することもあります。治療としては、骨折や腫瘍が原因であればその治療を行います。それ以外では対症療法として鎮痛薬や神経障害性疼痛薬の内服があり、痛みが強い場合は神経ブロック注射を検討します。
【胸部帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛】
胸部帯状疱疹は、帯状疱疹の一種で、胸部に発疹や痛みが現れることが特徴です。帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)によって発症し、通常は片側の神経に沿って帯状に発疹が現れます。症状としては、ピリピリ・チクチクとした痛み(発疹が現れる前に感じることが多い)感じることが多いです。その後、 数日後に小さな水疱が集まった発疹が現れます。かゆみや胸部に帯状疱疹が現れるとまれに息苦しさを感じることがあります。治療は、抗ウイルス薬で、ウイルスの増殖を抑えることと鎮痛薬、発疹に対して軟膏を塗布することがあります。痛みが強い急性期においては、神経根ブロックや硬膜外ブロックなどが鎮痛に有効です。
帯状疱疹の予防として、 帯状疱疹ワクチンを接種することで、発症リスクを減らすことができます。
圧迫骨折
圧迫骨折(あっぱくこっせつ)は、背骨に外力が縦方向に働いた時に生じる骨折で、尻餅や転倒が原因で起こることが多いです。特に高齢者で骨粗鬆症の方に多く見られます。圧迫骨折の症状としては、背部痛や体の前部方向にまで放散痛が発生することがあります。胸部と腰部の移行部(胸椎11番~腰椎2番の間)が多いとされています。
骨折発症時は、骨が接着するまで安静が必要となりますが、骨折部分に骨セメントを注入する治療法もあります。痛みに関しては、内服薬や神経根ブロックや硬膜外ブロック、椎間関節(後枝内側枝ブロック)が有効です。
圧迫骨折は、無症候性のこともあり、知らない間に骨折を起こしていることもあります。高齢者においては、健康寿命を長くするための骨粗鬆症の治療が大切になってきます。
胸椎椎間板ヘルニア
背骨を構成する骨(椎骨)の間にある軟骨(椎間板)が変性して後ろに突出する病気で、胸椎の部分でこれが発症するのは稀です。加齢による変性もありますが、激しいスポーツや外傷による外部からの強い力が加わったりして椎間板が突出すると、近くを通る神経や脊髄を圧迫することで、痛みやしびれの症状が引き起こされます。肋間神経痛の原因となることもあり、背部痛(背中の痛み)を引き起こす場合もあります。また下肢にしびれや脱力感をもたらすこともあり、膀胱・直腸障害が現れることもあります。根本的な治療としては手術が必要となりますが、肋間神経痛などの痛みの症状には各種内服薬やブロック注射が有効な場合があります。
胸部脊柱管狭窄症、胸椎椎間関節症
肋骨に守られた胸椎(胸の骨)は、首や腰の骨と比べ骨の変性に起因する痛みは発生しにくいと考えられますが、原因が内臓疾患ではない場合、胸部に関わる神経などに障害が生じていることが考えられます。
治療方法として、内服薬や貼付剤、ブロック治療として、神経根ブロック、胸部硬膜外ブロックや椎間関節ブロック(後枝内側枝ブロック)などがあります。
開胸術後疼痛症候群(PTPS)
肺がんや食道がん、もしくは心臓の手術などで開胸手術を受けたあとに痛みや不快感が生じ、持続する状態を開胸術後疼痛症候群(PTPS)と呼びます。症状としては、開胸した傷(創部)の周辺が痛んだり、疼いたり、または傷口から離れた場所でもピリピリとした痛みや締め付けられるような感覚が生じることがあります。原因としては開胸手術の際、胸壁や胸膜がダメージを受け、慢性的な炎症が生じて痛みが生じることや、肋骨の間が押し広げられた際に、肋間神経が損傷してしまったことで神経障害疼痛が引き起こされたことなどが考えられます。治療としては神経障害性疼痛薬の内服や、抗うつ薬の使用、神経ブロック注射などが痛みに対して行われます。
偽狭心症(頸椎症性神経根症)
偽狭心症(ぎきょうしんしょう)は、狭心症のような胸痛を引き起こしますが、実際には心臓の問題ではなく、頸椎(首の骨)の胸部に近い場所で神経根が圧迫された場合に胸痛が生じることがあります。痛みは狭心症に比べ、より肩に近い領域での症状が多いです。
その他、精神的なストレスや不安が原因で胸痛が生じることもありますので注意が必要です。