• 2026年2月1日

インフルエンザ抗体検査、結果が陰性だったらインフルエンザではないと言える?

インフルエンザB型は、例年A型の流行後に流行のピークを迎えることが多いとされていますが、今年は例年より早く、増加の兆しを見せています。

いとうペインクリニック院長の伊藤です。今回はインフルエンザの検査結果の判断についてのお話をしたいと思います。まず、日本ではインフルエンザの診断に,迅速抗原検査が広く用いられていますが、インフルエンザ様の症状(37℃以上の体温上昇,寒気・体熱感,咳,喀痰,倦怠感,咽頭痛,筋肉痛・関節痛,頭痛,鼻汁・鼻閉など)でインフルエンザ迅速抗原検査を実施し、陰性であれば、インフルエンザ感染は、否定できるのでしょうか?

答えはそうとは言い切れないということを、日本で行われたインフルエンザの迅速抗原検査の実施時期と検査の精度(感度)の経時的な変化をもとに話していきたいと思います。

2017 年12月~2018年2月および2018年12月~2019年3月、筑波メディカルセンター病院において、臨床的にインフルエンザの疑い(上述症状)があり、担当医がインフルエンザ迅速抗原検査を必要と判断した患者を対象として、症状の発生から検査の実施までの時間と迅速抗原検査の感度・特異度の関係について調査されました。1)

インフルエンザの真の陰性・陽性の最終判断は、リアルタイムPCR 法(検体を採集し、DNAを増幅させながら、インフルエンザウイルスの増幅量をリアルタイムで測定する技術:インフルエンザのウイルス遺伝子が検出されればインフルエンザ陽性と確定判定)を用いて評価されています。

313名を最終対象者とし 、リアルタイムPCR法にて129名(41.2%)でインフルエンザウイルスが検出されました。(A型:88名,28.1%; B型:41名,13.1%)

これによると、インフルエンザ迅速抗原検査の感度は,全体で54.3%(95%CI(CI:信頼区間):45.3~63.1), 特異度は100%(95%CI:98.0~100)だったとのことです。

症状が出てからの
検査のタイミング
感度特異度
12時間未満38.9%
(95% CI:17.3~64.3)
100
(91.4-100)
12~24 時間40.5%
(95% CI:25.6~56.7)
100
(92.9-100)
24~48時間65.2%
(95% CI:49.8~78.6)
100
(93.2-100)
48時間以降69.6%
(95% CI:47.1~86.8)
100
(91.4-100)
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インフルエンザ迅速抗原検査の感度は、インフルエンザ様症状の発症から時間が経過するに連れて上昇することが示されています。一方、特異度には大きな変化はありませんでした。

参考文献
1)感染症学雑誌 第95巻第1 号9—16 Influence of Illness Duration on the Sensitivity and Specificity of Influenza Antigen Testing: A Prospective Observational Study Using Real-time PCR Yusaku AKASHI et al.

結果の見方について

検査の特異度が、100%ならば、インフルエンザ迅速抗原検査結果が陽性であれば、インフルエンザ陽性で確定です。

一方、感度70%の場合は、100人の陽性患者がいるとすると、そのうち30%は陰性と出たがインフルエンザに感染している(偽陰性)ということになります。これちょっと微妙な結果じゃあないですか。

陰性であった場合は?インフルエンザではないの? 陰性的中率について

陰性だった場合は、陰性的中率でも判断します。陰性的中率とは、検査が陰性であった場合に、実際に病気がないと判断できる確率を表しています。

インフルエンザの検査をされる人の有病率(術前診断)は、41.2%でしたので、これで

陰性的中率について、計算した結果を以下に示します。ちなみに、陽性的中率(検査結果が陽性と診断された人が本当に病気である確率)は、特異度100%の場合、陽性的中率も100%となり、検査陽性ならインフルエンザと診断がつきます。

陰性的中率は、インフルエンザ様の症状が出現してから検査した時間によって以下のように変わってきます。

症状が出てからの
検査のタイミング
感度陰性的中率
12時間未満38.9%
(95% CI:17.3~64.3)
70.0
12~24 時間40.5%
(95% CI:25.6~56.7)
70.6
24~48時間65.2%
(95% CI:49.8~78.6)
80.4
48時間以降69.6%
(95% CI:47.1~86.8)
82.4
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インフルエンザ様の症状発症後、24時間以前に検査した結果が陰性の場合は、70%、24時間以降で検査した場合、陰性であれば80%はインフルエンザに実際にかかっていないでしょうといえます。

インフルエンザは症状のみでも診断可能 みなし陽性

インフルエンザ用の症状(37℃以上の体温上昇,寒気・体熱感,咳,喀痰,倦怠感,咽頭痛,筋肉痛・関節痛,頭痛,鼻汁・鼻閉・腹部症状など)が出た場合に加え、家族など(濃厚接触者)でインフルエンザの診断が出ている方などであれば、検査で陰性であっても、患者さんに説明しインフルエンザの処方を行っています。

補足:感度・特異度、陽性・陰性的中度について

感度と特異度

感度と特異度は、検査自体の精度を表しています。感度(Sensitivity)は、病気「あり」の人のうち、検査で陽性と正しく判定できた割合を表し、特異度(Specificity)は、病気「なし」の人のうち、検査で陰性と正しく判定できた割合を表しています。

Spin Snout:(Specificity Positive(特異度) rule in Sensitivity Negative(感度) rule out)とよく表現されますが、特異度が高い検査が陽性なら陽性の可能性が高く、感度が高い検査が陰性なら、陰性の可能性が高いことを表しています。

陽性的中度・陰性的中度

感度と特異度は検査自体の精度を示しますが、実際の検査結果を解釈する際には、陽性的中度(陽性と診断された人が本当に病気である確率)や陰性的中度(陰性と診断された人が本当に病気ではない確率)が重要です。

検査前の診察の大切さについて

同じ検査をしても、検査を受ける集団の事前確率(有病率:検査を受ける集団においての病気をもっている人の割合の違い)の違いにより的中率の結果がかわってきます。

但し、特異度が100%の場合、陽性的中率は100%のままです。

しかし、実際には、特異度100%は理想値であって、検査の実測値を増やすと特異度は少し低下すると思われます(特異度97.4%という報告2)もあります)。少しでも特異度が低くなった場合、例えば99%である場合、有病率の違いにより陽性的中率は以下のように変化してきます。

事前確率(有病率)1%の場合、感度69.6%、特異度99%ならば⇒陽性的中率41.3%

事前確率(有病率)41.2%の場合、感度69.6%、特異度99%ならば⇒陽性的中率98.0%

検査結果が陽性でも、インフルエンザ陽性といえるためには、医師による的確な臨床症状によるインフルエンザの可能性が高いという判断(事前確率をあげること)が大切なのがお分かりになると思います。

文献
2)Vos LM, Bruning AHL, Reitsma JB, Schuurman R, Riezebos-Brilman A, Hoepelman AIM, et al.: Rapid Molecular Tests for Influenza, Respira tory Syncytial Virus, and Other Respiratory Vi ruses : A Systematic Review of Diagnostic Ac curacy and Clinical Impact Studies. Clin Infect Dis. 2019;69:1243―53.

当院ではインフルエンザの診断と治療を行っています。

インフルエンザのみならずコロナウィルスの迅速抗原検査(所要時間15分)も実施しています。

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