- 2025年12月29日
【新井恵理那さんも経験】「ぎっくり腰:急性腰痛症」の原因の1つ 「椎間関節症(ついかんかんせつしょう)」について

ブログをご覧いただきありがとうございます。
大阪市東淀川区の阪急・JR淡路駅すぐの「いとうペインクリニック」です。
フリーアナウンサーの新井恵理那さんが、人生初の「ぎっくり腰:急性腰痛症」に見舞われたことをSNSで明かし、話題となっています。
「ソファに座る長男に絵本を差し出した瞬間、ピキッときた」
「動けなくなる感じ」
このニュースを聞いて、「自分も経験がある…」と思われた方も多いのではないでしょうか。
新井さんは、その原因について「座りっぱなしでの仕事」「寒さ」「育児(子供が重くなった)」などを推測されていますが、これらは医学的にも急な腰痛を引き起こす典型的なリスク要因です。「ぎっくり腰」の原因として、「椎間関節症」が考えられましたので、今回は、新井さんの事例をヒントに、「ぎっくり腰」の主な原因の1つである「椎間関節症」について、お話します。
「ピキッ!」ときた瞬間の正体:椎間関節症の可能性

新井さんは、ソファに座った状態から絵本を差し出すという、動作をした瞬間に激痛が走ったと報告されています。
実は、このような動作で発症する「ぎっくり腰」の原因として、「椎間関節症(ついかんかんせつしょう)」の可能性が強く考えられます。
「椎間関節症」の特徴的な症状
「体をひねる動作」や「前かがみから体を起こそうとする時」、「寝返りを打つ時」などにズキッとした鋭い痛みが走るのが特徴です。また、長時間座っていて立ち上がる際に発生する痛みについても、この疾患が疑われます。
椎間関節の解剖図
図は腰部の背中側から見た椎間関節の解剖図です。上下に連なる腰骨(腰椎)の後方部分のつなぎ目 ◌ が椎間関節です(前方の腰椎のつなぎ目は椎間板となります)。
椎間関節症は、背骨の後ろ側にあるこの椎間関節に何らかの炎症が起きた状態です。腰痛全体の数十パーセントを占めると言われるほど頻度の高い疾患ですが、一般のレントゲンのみでは診断は困難です。

図:日関病誌 30(2):125-130 2011 Lumbar Facet Joint Disorders Kazuhisa TAKAHASHIより抜粋一部変更
なぜ「寒さ」と「座りっぱなし」が危険なのか? 病態について

新井さんが推測された原因は、まさに椎間関節症の引き金となる要素です。それぞれの要因がどのように腰へ影響するか解説します。
座りっぱなし(長時間同一姿勢)
デスクワークなどで猫背や反り腰が続くと、腰の筋肉や関節に持続的な負荷がかかり、ダメージが蓄積されます。同じ姿勢が続くことは、腰にとって大きなストレスとなります。
寒さ
新井さんも「寒いですし」と注意喚起していましたが、体が冷えると血行が悪くなり柔軟性が失われます。その結果、急激な動作で痛みが出やすくなります。
急な負荷(育児など)
「下の子も重くなってきた」とのことですが、重いものを持ち上げたり、不用意に腰をひねったりする動作は、関節や椎間板に急激な負担をかけ、炎症(ぎっくり腰)を引き起こす直接的な原因となります。
病態について
椎間関節は、急速な前屈動作、長期間の同じ姿勢による圧迫力、急激な後屈動作などにより負荷がかかりやすいですが、炎症がこの部分に発生すると腰部に痛みが発生します。

参考文献:J. Lumbar Spine Disord.日本腰痛会誌,13(1): 31 – 39, 2007 特別企画●腰痛の病態解明 腰椎椎間関節由来の腰痛の病態と治療 田口 敏彦 参考、図抜粋一部変更
椎間関節症になってしまったら? 正しい対処法
新井さんは「2日間自宅で安静」にした後、病院で「レントゲン、理学療法、痛み止め」の処置を受けられたそうですが、やはり発症直後(急性期)は、無理に動かさず安静にすることが基本です。痛みが強い時期に無理なストレッチや運動を行うのは逆効果となるため避けましょう。
痛みが強い場合
医療機関での診断
自己判断は禁物です。単なる腰痛だと思っていても、圧迫骨折や椎間板ヘルニア、まれに内臓疾患が隠れていることもあります。医療機関を受診し診断を受けることが大切です。
これは標準的な対応ですが、痛みが強くて動けない場合、ペインクリニックでは「神経ブロック注射」を推奨します。痛みの原因となっている神経の近くに局所麻酔薬や抗炎症薬を注入することで、即効性のある除痛が期待でき、痛みの悪循環を断ち切ることができます。また、椎間関節症は,腰神経の後枝内側枝ブロック(または椎間関節ブロック)により診断されます。

参考画像:J. Lumbar Spine Disord.日本腰痛会誌,13(1): 31 – 39, 2007特別企画 腰痛の病態解明 腰椎椎間関節由来の腰痛の病態と治療 田口 敏彦 より抜粋一部変更
下の画像は、透視を使った、腰部の椎間関節へのブロック注射の画像です。

参考 透視画像:臨床スポーツ医学:Vo1,39, No,2〔2022-2)より抜粋一部変更
当院の透視室風景

当院では、後枝内側枝ブロック注射(および椎間関節ブロック注射)は、外科用Cアームを使用し安全に行っています。
慢性の椎間関節症もあります。
椎間関節症は「ぎっくり腰:急性腰痛症」のみでなく、慢性腰痛症の原因ともなります。

参考画像:Neuroradiology Differential Diagnosis of Facet Joint Disorders Julia E. C. Anaya, MD et al. March-April 2021 543-558より抜粋一部変更
椎間関節の変性について、右に行くほど椎間関節部分の変性が進行しているのがお分かりになると思いますが、急性腰痛症だけでなく、原因不明とされる慢性腰痛症の中にも椎間関節症によるものがあります。
今後の予防と対策

姿勢の改善: デスクワーク中は時々立ち上がって体を動かし、長時間同じ姿勢(特に猫背)にならないよう意識しましょう。
無理のないストレッチ: 痛みが引いてきたら、腰やお尻、股関節周りの筋肉をゆっくり伸ばすストレッチが有効です。
急な腰痛が発生した場合は、無理をせず早めに専門医にご相談ください。
寒さが本格化するこの季節、皆様もどうぞ腰をお大事になさってください。