• 2025年11月18日

しゃっくりとは?しゃっくりを止めるのにはどうしたらいいの?

いとうペインクリニックの院長の伊藤です。以前、子供病院の麻酔科にいた時の話ですが、小児・新生児の心臓手術の体外循環という操作(心臓の手術をする際、心臓の替わりにポンプで体が酸素不足にならないよう血液を循環させる方法)の際に、血圧を下げるのにコントミン🄬(一般名クロルプロマジン)を使っていたよ、と聞いたことがあります(自分の場合は、コントロールしやすいニトログリセリンを主に使っていましたが)。つい最近、しゃっくりが止まらなくなって困ったよ、という患者さんがおられたのですが、近医でコントミン🄬という薬を処方されたら一発でしゃっくりが止まったよという話をお聞きし、その時の記憶がよみがえってきました。今回はしゃっくりについての話をしたいと思います。

しゃっくりとは

しゃっくり(吃逆)は、喉~胃(上部消化管)に誘因となる刺激が生じた際におこりやすく、生理的な反射です。例として赤ちゃんがミルクを喉に詰まらせたときに反射的に横隔膜が収縮して、陰圧を生じさせミルクを胃まで送り込ませる際にも発生します(喉頭蓋が閉じしゃっくりの音『ひっく』が発生します)。(下図)

飲食物やミルク以外のしゃっくりの原因としては、しゃっくりの発生する神経経路に関与する脳や横隔膜、胸部または腹部臓器に影響を及ぼす刺激や病変が、迷走神経または横隔膜神経を刺激して発生することもあります。

しゃっくり発生のメカニズム

図:しゃっくり(吃逆)発生のメカニズムについて

 

参考文献)図:Aliment Pharmacol Ther. 2015 Nov;42(9):1037-50. doi: 10.1111/apt.13374. Epub 2015 Aug 25.Systemic review: the pathogenesis and pharmacological treatment of hiccups M Steger M SchneemannM Fox
より抜粋 図改変

脳、横隔膜、胸部または腹部臓器に影響を及ぼす異物や炎症は、迷走神経または横隔膜神経を刺激し、延髄のしゃっくり(吃逆)中枢を活性化し、しゃっくり中枢より横隔膜神経と内肋間神経(筋肉の運動に関与する神経)を介して、横隔膜およびその他の呼吸筋の反復性筋肉の収縮が誘発されます。直後に反回神経が活性化され、声門(喉頭蓋部分)が閉じ、吃逆の特徴的な『ひっく』が生じるとされています。

しゃっくりの止め方 非薬物療法

鼻咽頭刺激迷走神経刺激呼吸
口咽頭刺激(氷水など)誘発性嘔吐
びっくりさせる
顔に冷シップ
息止め

注)参考文献にはそれ以外の刺激方法の記載もありましたが、危険も伴うため除外しました。医学的なエビデンスはありません。

非薬物療法の院長の解釈

水を飲む:水を飲むことで脳に詰まりの原因が解除されたと認識させる。

息を止める:CO2が溜まると、呼吸中枢が呼吸を優先させるよう働くため。

喉に指を入れて誘発性嘔吐:嘔吐は迷走神経を経由して嘔吐中枢に働くため。

別の物事に意識を集中させる:しゃっくりに集中している脳の注意を別の物事に注意をそらせるといいという人もいます。

この注意をそらせるという方法は、疼痛のコントロールにもあてはまると思います。

日本でしゃっくりの適応のある薬剤について エビデンスレベルの高い薬剤は?

残念ながら2025年10月現在、エビデンスの高い薬剤はありませんが、コントミン🄬(一般名:クロルプロマジン)は、しゃっくり(吃逆)中枢の抑制が期待でき、しゃっくりを止める薬として保険適応があります。

その他、バクロフェン(筋弛緩作用ならびにしゃっくり中枢の抑制)、メトクロプラミド(胃膨満が原因の場合など)、ガバペンチン(中枢神経性吃逆の場合期待)などがあります。

漢方では芍薬甘草湯や変わったところでは柿のへた(蒂湯 )などがあります。

その他、抗精神病薬、抗てんかん薬などが使用されるケースもあるようです。

持続するしゃっくりについて

48時間以上続くしゃっくりは、持続性しゃっくり、1ヶ月以上続く場合は、難治性しゃっくりとされ、専門的な治療が必要となる可能性があります。持続性または難治性しゃっくりに対する推奨レベルとして海外の文献においては以下のように推奨されているものもあります。

薬剤・用量医学的根拠レベル(数字が小さいほど根拠が高い)
1次推奨
バクロフェン (15-60mg分3/日)2 b
ガバペンチン (900-1800分3/日)4
プレガバリン (150-300分2/日)5
2次推奨
メトクロプラミド (30mg分3/日)2 b
ドンペリドン (30mg分3/日)5
3次推奨
クロルプロマジン (100-200mg分2/日)4
その他の選択薬物
カルバマゼピン (300-300mg/日)4
バルプロ酸 (少量から20mg/kg/日上限)4
フェニトイン (300mg分3/日)5
ニフェジピン (60-180mg/日)4
アミトリプチン (25-100mg/日)5

参考文献)Aliment Pharmacol Ther. 2015 Nov;42(9):1037-50. doi: 10.1111/apt.13374. Epub 2015 Aug 25.Systemic review: the pathogenesis and pharmacological treatment of hiccups M Steger M SchneemannM Fox


内科治療も行っています

しゃっくりで来院される患者さまは、めったにおられませんが、当院では痛み以外に風邪や便秘、血圧コントロールなどの身近な内科治療も行っています。ぜひ何かお困りのことありましたら、お気軽に当院を受診してください。

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