- 2025年4月12日
新しい不眠症治療薬 クービビックについて
クービビックとは?

クービビック(一般名:ダリドレキサント)は、2024年12月に国内で発売された新しい不眠症治療薬です。覚醒を促すオレキシンという物質の作用を抑制することで、自然な睡眠へと導く作用を持っています。
ベルソムラやデエビゴと同様に従来の睡眠薬と比較して依存性が少なく、安全性が高いとされています。高齢者や長期的な使用を検討する患者にも適した選択肢となる可能性があります。
クービビックの作用機序
クービビックは、オレキシン受容体(オレキシン1受容体およびオレキシン2受容体)を選択的に阻害することで、覚醒を抑制し、睡眠を促進する。
- 最高血中濃度到達時間:服用後1時間以内
- 半減期:約6.6時間(50mg投与時)
- 作用時間:比較的短時間で、持ち越し効果が少ない
これにより、夜間の覚醒を抑えつつ、翌朝に眠気が残りにくい特徴を持ちます。
既存の睡眠薬との比較
現在、睡眠薬にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる作用機序と特徴を持っています。クービビックと他の睡眠薬を比較すると以下のようになります。
薬剤名 | 分類 | 作用機序 | 主な特徴 |
クービビック(ダリドレキサント) | オレキシン受容体拮抗薬 | 覚醒を促すオレキシンの作用を阻害 | 依存性が低く、持ち越し効果が少ない |
デエビゴ(レンボレキサント) | オレキシン受容体拮抗薬 | 同上 | 作用時間が長く、中途覚醒にも効果的 |
ベルソムラ(スボレキサント) | オレキシン受容体拮抗薬 | 同上 | 効果時間が長く、入眠と睡眠維持をサポート |
ロゼレム(ラメルテオン) | メラトニン受容体作動薬 | 体内リズムを調整 | 依存性がなく、自然な睡眠を促す |
ルネスタ(エスゾピクロン) | 非ベンゾジアゼピン系 | GABA受容体を活性化 | 比較的即効性があり、短時間型の睡眠剤 |
ハルシオン(トリアゾラム) | ベンゾジアゼピン系 | GABA受容体を活性化 | 即効性が高いが、依存性のリスクあり |
クービビックは、特に「持ち越し効果が少ない」ことが特徴と言われ、翌朝の眠気が気になる方に適しています。一方で、作用時間が比較的短いため、クービック使用で中途覚醒や早朝覚醒がある場合は、より作用効果が長いと考えられるデエビゴやベルソムラのほうが向いていることがあります。
クービビックのメリット・デメリット
メリット
- 依存性が低い:ベンゾジアゼピン系と比較して依存性や離脱症状のリスクが少ない
- 翌朝の眠気が少ない:持ち越し効果が低く、日中の眠気発生が少ない
個人的に院長が試していますが、翌日の持ち越し効果はデエビゴ、ベルソムラと比較し少ないと感じました。
- 中途覚醒の改善:夜間に目が覚めやすい人にも適している
- 安全性が高い:高齢者でも使用しやすい
デメリット
- 効果時間が短め:長時間の睡眠維持には向いていない場合がある
- 高価な薬剤:他の睡眠薬に比べて薬価が高め
- CYP3A4阻害薬との併用禁忌:一部の抗真菌薬や抗生物質と併用できない
クービビックの服用方法と注意点
服用方法
- 1日1回 50mgを就寝直前に服用(高齢者や肝機能が低下している場合は25mg)
- 食後の服用は避ける(高カロリー食後は効果が遅れる可能性あり)
副作用
- 傾眠
- 頭痛
- 倦怠感
- 悪夢や異常な夢
- 睡眠時麻痺(まれに報告あり)
また、ナルコレプシーやカタプレキシーがある場合、症状を悪化させる可能性があるため注意が必要ですが、副作用出現は従来のものに比べ少ないとされています。
クービビックは、新しいオレキシン受容体拮抗薬として、不眠症治療における新たな選択肢となりました。特に「依存性が少なく、翌朝の持ち越しが少ない」という点が特徴で、既存の睡眠薬と比較しても安全性の高さが期待されています。
しかし、作用時間が短めであるため、中途覚醒が主な悩みの方にはデエビゴやベルソムラが適している場合もあります。患者の症状やライフスタイルに合わせた適切な薬剤選択が重要です。
不眠に悩んでいる方は、自己判断での服用を避け、医師と相談のうえで適切な治療法を選ぶようにしましょう。