- 2026年2月6日
大多数の線維筋痛症患者は、ストレートネック?
いとうペインクリニック院長の伊藤です。ストレートネックは最近よく聞かれるようになった頸部の形態ですが、世界的にはあまりなじみのない言葉です。Forward Head Posture(頭位前方姿勢)という言葉が、ストレートネックにあたるものと院長は理解しています。
今回は、線維筋痛症(広範囲の全身痛み、疲労を伴う原因がよくわかっていない疾患で女性に圧倒的に多い性差のある疾患)を持つ患者さんにおいて、レントゲンによる頸椎の前弯の消失(文字通りストレートなネック)が多かったという論文の紹介です。
線維筋痛症とその他のリウマチ疾患患者さんでの頚部レントゲン比較
(論文内容について)
2015年~2018年にかけて、年齢18歳から70歳、頸部痛の強度が中等度から重度、かつリウマチ性疾患の米国リウマチ学会(ACR)基準において線維筋痛症の基準を完全に満たした155名に対し、年齢と教育水準が同等な米国リウマチ学会(ACR)基準を満たした他のリウマチ性疾患患者115名を比較対象として、患者の頸椎X線写真を撮影し、コブ角(骨がどれだけ弯曲しているかを表す角度のこと)を測定して、両者に差があるかどうか分析しています。患者さんはすべて女性さんで実施されています。

上の写真は正常な頸椎の前弯を示しています。
頸椎は、前弯(Cの字のように前に弯曲している)しているのが通常の形となります。
脊椎のコブ角は最も傾いている2つの椎体のなす角度から求めますが、7つの頸椎のうち2番目の椎体(C2)上縁と7番目(C7)の椎体下縁の間で線を引いてα(コブ角)を計測したとの記載がありました。また、本文献においては、正常な頸椎のコブ角は21~43度の範囲内とされています。
結果:


正常なコブ角を持つ人の頸椎レントゲン 線維筋痛症患者さんの頸椎レントゲン
線維筋痛症の平均頸椎弯曲は6.4 ± 5.2度、対照群は13.8 ± 7.4度で7度以上の差をもって有意差(p < 0.001:統計学的に両者に差がある)があったとのことです。 21°未満の弯曲が正常範囲から外れていると考えると、線維筋痛症の患者さんのみならず、他のリウマチ疾患をもっている患者さんも頸椎の前弯の角度が少ない結果となっています。
しかし、この中で、頸椎がほぼ直線である(論文では10度以下の弯曲)人は、線維筋痛症患者さん129名(83.2%)に対し、対照群患者さんは37名(32.2%)と、こちらも統計的な有意差をもってストレートネックの割合が線維筋痛症の患者さんで高い割合であったとのことでした(p < 0.001)。
結論:
線維筋痛症患者さんのほとんどには、単純なX線写真で確認できるストレートネックの異常が見られたとのことです。特に、線維筋痛症の患者さんの83.2%において、頸椎はほぼ直線でした(コブ角10度以下)。これらの結果より、他のX線画像異常を伴わないストレートネックは、線維筋痛症において気づかれていない重大な解剖学的異常である可能性があると考察されています。これは診断に役立つだけでなく、筋肉の緊張や圧力の増加が病因として考えられることを示唆するのではないかと考察しています。
参考文献 1)Journal of Clinical Rheumatology Volume 29, Number 2, March 2023 The Vast Majority of Patients With Fibromyalgia Have a Straight Neck Observed on a Lateral View Radiograph of the Cervical Spine An Aid in the Diagnosis of Fibromyalgia and a Possible Clue to the Etiology Robert S. Katz, MD et all.

線維筋痛症は原因のわからない、難治性の疾患です。今回の文献は、頸椎のストレートネックについての論文報告でしたが、個人的には、線維筋痛症に何らかの姿勢の異常が線維筋痛症患者さんの症状に影響している可能性を示唆する文献だと思いました。今後、線維筋痛症の治療のブレイクスルーになるような発表があればと心待ちにしています。