- 2026年1月27日
腰部脊柱管狭窄症③ 保存療法 薬物・ブロック注射について
こんにちは、いとうペインクリニック院長の伊藤です。令和4年国民生活基礎調査(厚労省)によると、日本人の自覚症状のトップは男女とも腰痛であることが示されていますが、ペインクリニックでも疼痛で来られる患者さんの中でも腰痛の患者さんの割合が最も高いです。そして、高齢の患者さんになるほど、腰痛の原因が、腰部脊柱管狭窄症による割合も高くなります。
今回は、腰部脊柱管狭窄症の診療ガイドライン2021年改訂版をもとに腰部脊柱管狭窄症の保存療法についての話をしていきたいと思います。
脊柱管狭窄症の3つの型(馬尾型・神経根型・混合型)について
腰部脊柱管狭窄症ガイドライン2021年改訂版では、脊柱管狭窄症の種類によって、投薬の推奨が違ってきますので、まずは脊柱管狭窄症の3つの型(馬尾型・神経根型・混合型)について説明します。

引用文献;J. Nihon Univ. Med. Ass 2012 71(2) 116-122 腰部脊柱管狭窄症の診断と治療 大島正史 徳橋泰明 一部改変
まずは馬尾型ですが、硬膜(脊髄の外側を覆っている膜)が全周性に圧迫されると、下肢のしびれや痛み、臀部痛に加えて、会陰部の違和感を訴えるようになります。
一方、神経根型は、単一の神経が圧迫によって障害されることで、障害された神経根支配の領域である下肢のしびれや痛み、臀部痛を発症します。
混合型は程度の差こそあれ馬尾型・神経根型の両方の症状が出現します。
薬剤について
薬物治療は、概ねガイドラインで推奨をしていますが、特に馬尾症状を有する場合は、リマプロスト(経口プロスタグランジンE1製剤)の使用が、医学的な根拠も強く推奨されています。
神経根型の患者には、NSAIDsといわれる非ステロイド性の抗炎症剤(市販薬のロキソニンやイブプロフェンなどの薬剤)の短期の使用は、推奨されていますが、馬尾型の患者には推奨はされていません。
ガバペンチノイド(リリカ®やタリージェ®、ガバペン®)の明確な推奨はできないとの意見が多いです。
参考資料:腰部脊柱管狭窄症ガイドライン2021年改訂版
院長自身は、臨床経験から、ガバペンチノイドが有効な患者さんも多いと感じています。とはいっても、薬剤についてもそうですが、投与方法による満足度も個人差がありますので、上述以外の薬剤もいろいろ試して患者さんが納得できる薬剤を決めていくこととなります。
ブロック注射は有効か?ステロイド投与は有効か?
硬膜外ブロックの短期的な痛みやしびれに対しての効果は、医学的な証拠においても推奨されています。一方、長期的なブロックの効果についての効果は、はっきりしていません。ステロイドは効果的であると考えられていますが、長期連続投与は否定的に考えられています(ステロイドの長期使用は、副腎萎縮や骨密度にも影響を与えます)。
参考資料:腰部脊柱管狭窄症ガイドライン2021年改訂版
最新の海外文献による報告(2025年)
2025年に報告された海外文献(米国神経学会)において、頸部と腰部の神経根症状(主に上肢や下肢に放散するしびれや痛みを伴った症状)と腰部脊柱管狭窄症に対し硬膜外ステロイド注射(ESI)による改善について、痛みおよび障害の短期(≤3か月)および長期(≥6か月)の再評価(以前にもなされている)がなされています。
本レビューでは、頸椎および腰椎神経根症、さらには腰椎狭窄症におけるESIの痛みや障害の軽減において限定的な効果が主に短期的に認められていることを確認しています。また、長期的な障害を軽減する可能性が示唆されたとありますが、長期的な痛みを軽減するかどうかを判断するには十分な証拠はなかったとのことです。
参考文献:Neurology. 2025 Mar 11;104(5):e213361. doi: 10.1212/WNL.0000000000213361. Epub 2025 Feb 12.Epidural Steroids for Cervical and Lumbar Radicular Pain and Spinal Stenosis Systematic Review Summary: Report of the AAN Guidelines Subcommittee Carmel Armon et all
当院での見解
院長自身の臨床経験からですが、硬膜外ブロックや神経根ブロックなどの注射は、椎間板ヘルニア性の坐骨神経痛と比べると改善度は低いですが、注射により劇的に改善する方や、疼痛が緩和し日常生活が楽になったと言われる患者さんも多くおられますので、まずはやってみるべき治療法であると考えています。ステロイド投与においては、急性の痛みの増悪時は使用しますが、慢性の疼痛に対しては、漫然と使用しないようにしています。数回やって効果がない場合、短時間しか有効でない場合は、内服治療を中心に治療を行っています。
補足:生活習慣の見直しについて
ブロックや内服薬に効果がある場合も、注射や薬のみに頼ることなく、生活習慣の見直しが重要となってきます。痛みやしびれの改善に合わせて、運動や栄養管理など日々の努力も必要となってきます。運動療法は、ガイドラインでも実施が薦められています。
参考資料 腰部脊柱管狭窄症ガイドライン2021年改訂版
まとめ:ペインクリニックでの治療

ペインクリニックでは、薬物療法や専門的な神経ブロック注射を駆使して「痛みの悪循環」を効果的に断ち切り症状の改善をはかります。
長引く痛みやしびれは、身体的だけでなく精神的にも大きな負担となります。我慢せず、ぜひ一度、痛みの専門家であるペインクリニックにご相談ください。適切な治療で痛みから解放され、快適な毎日を取り戻すためのお手伝いをいたします。