- 2026年1月25日
- 2026年1月27日
腰部脊柱管狭窄症① 診断について
こんにちは、いとうペインクリニック院長の伊藤です。令和4年国民生活基礎調査(厚労
省)によると、日本人の自覚症状のトップは男女とも腰痛であることが示されています。
いとうペインクリニックでも疼痛で来られる患者さんの中でも腰痛の患者さんの割合は
高いですが、高齢の患者さんになるほど、原因が、腰部脊柱管狭窄症による割合が増加し
ます。
腰部脊柱管狭窄症の診療ガイドライン2021年改訂版をもとに、今回は、腰部脊柱管狭
窄症の診断についての話をしていきたいと思います。
腰部脊柱管狭窄症とは(原因)
加齢により増加する、臀部・下肢痛の原因として頻度の高い腰部脊柱管狭窄症に対しての定義について統一された見解はありませんが、腰椎(腰骨)部分の脊髄神経の通り道である脊柱管(脊髄神経のとおる背骨の中にある空間)や神経(神経根:脊髄神経から分岐する末梢神経)の腰椎よりの出入り口である椎間孔が変性・狭窄して、神経自身が圧迫されたり、神経周囲の血流が悪化することで症状がでてくると考えられています。

図:医学界新聞プラス [第1回]腰部脊柱管狭窄症_疾患の基礎 連載 古谷 英孝 2024.09.23より抜粋一部変更
日本脊椎脊髄病学会「改訂第6版」には脊柱管を構成する骨・椎間板・靭帯などによって、脊柱管や椎間孔が狭小化し神経の絞扼性障害をきたして症状が発現したものと記載されています。生来、脊柱管が狭い先天性もありますが、一般的には加齢による脊椎症性変化(脊柱管を構成する骨・椎間板・靭帯)の変性によるものが多く、中年以降に発症するものが多いとされています。
腰部脊柱管狭窄症とは(症状)
症状としては腰痛の有無は関係なく、臀部・下肢に疼痛・しびれ・倦怠感などの症状が認められ、患者は歩行や立位によって悪化し、時には、下肢の筋力の低下を示すことがありますが、臥位やや安静時には異常が消失または緩和するとされています。
よく、自転車は問題ないけど、歩くとダメといわれる方が多くおられますが、典型的な腰部脊柱管狭窄症の症状です。
腰部脊柱管狭窄症の診断について
脊柱管狭窄症の診断基準は以下の通りです。
診断基準
- 臀部から下肢の疼痛やしびれを有する
- 症状は立位や歩行の持続によって出現または増悪し、前屈や座位保持で軽減する
- 腰痛の有無は問わない
- MRIなどの画像で変性・狭窄所見が存在する
(注)診断基準では腰痛の有無は問わないとされていますが、腰部脊柱管狭窄症に腰痛がないわけではありません。腰痛を伴う患者は多くおられます。
診断においては、まずは、①~③の診断基準が大切になってきます。診察する際の注意点として、40代後半~50歳以降の中高年で臀部から下肢にかけての動作時の痛みやしびれがあり、歩行や後屈で悪化、前屈位やしゃがんで症状が軽減する場合は、まずは腰部の脊柱管狭窄症を疑います。夜間のこむら返りを訴える場合も腰部脊柱管狭窄症も鑑別に入れています。
その後、レントゲンや場合によっては腰部MRIによる画像で腰部脊柱管狭窄症の判断をします。
(注)前後屈位の症状は、必ずしも典型的な症状ではないとの報告もあります。
腰部脊柱管狭窄症の間欠跛行について
間欠跛行は、腰部脊柱管狭窄症に必発の症状ではありませんが、血管性の間欠跛行との鑑別は大切になってきます。間欠跛行とは、腰部脊柱管狭窄症によって、歩行時に、臀部下肢に症状が出現し、腰を下ろして休まないと症状が治まらないような状態を(神経性)間欠跛行と言います。末梢動脈疾患によっておこる血管の病気である(血管性)間欠跛行との鑑別は重要となってきます。血管性間欠跛行は、糖尿病・高血圧・脳血管障害・虚血性心疾患などが原因の場合もあり、両方が合併していることもあり(腰部脊柱管狭窄症の患者の6.7%に末梢動脈疾患があるという報告もあります)、血管性の間欠跛行は、治療せず放置していると大変危険です。そのため両者の鑑別は、必要となってきます。以下に鑑別方法について示します。
(注)腰部脊柱管狭窄症に間欠跛行は必発ではありません。
血管性と神経性間欠跛行の鑑別について

引用文献;J. Nihon Univ. Med. Ass 2012 71(2) 116-122 腰部脊柱管狭窄症の診断と治療 大島正史 徳橋泰明
日本脊椎脊髄学会の腰部脊柱管狭窄症の診断サポートツールについて
以下に示します評価項目で合計7点以上(‐2点~16点満点)になると腰部脊柱管狭窄症のリスクが高いと判断されるとされています。(感度92.8%、特異度78.0%)

補足:
ABI(足関節上腕血圧比):
ABIは上肢の血圧に比べ下肢の血圧が低くなっているかみているものです。下肢の方が上肢より10%以上低い場合(ABI:足首の血圧÷上腕の血圧<0.9)の場合は、血管性の障害が疑われます。

図 Medical Technology Vol. 53 No. 8 (2025. 8) 松山赤十字病院 検査部 宮内隆光 より抜粋
健常者の場合、通常は、下肢の血圧が、上肢より10-15mmHg高く出ます(ABIは1.0以上)が、下肢の血管が狭窄してくると、上肢の血圧より低くなってきます。
ATR(アキレス腱反射):
ATRは、アキレス腱反射ですが、足をだらっとした状態で打腱器を用いて検査された場合、反射が低下または消失している場合は、腰部脊柱管狭窄症を疑う身体所見とサポートツールでは示されています。下図参照

図 Nippon Rinsho Vol 83,Suppl 2,2025 Tests for diagnosing and assessing the severity of diabetic polyneuropathy 出口尚 より抜粋
SLRテスト(下肢伸展挙上テスト):
SLRは、下肢を挙上させたときにしびれや疼痛が誘発されるかを示したものですが、腰部脊柱管狭窄症では陽性になる可能性は低いとされています。
(SLRテストは、椎間板ヘルニアでは陽性になることが多い印象です。ペインクリニックではよく使用するテストとなります。)

図 整形外科看護 30(1): 23-26, 2025. 北海道大学病院 整形外科 長谷川裕一より抜粋
感度が高い検査で陰性と出た場合は、腰部脊柱管狭窄症ではない確率が高いです。一方、特異度が高い検査で、陽性と出た場合は、腰部脊柱管狭窄症の可能性が高いと判断できます(SnOUT SpIN:スナウト スピン)。
ガイドラインでは、感度・特異度とも高いと示されていますが、院長の個人的な感想としては、上記の腰部脊柱管狭窄症サポートツールの感度は、90%台とそこそこ高いですが、78%の特異度はそこまで精度は高くないと思います。このサポートツールで診断を進める場合は、7点未満となった(陰性)場合は、腰部脊柱管狭窄症の確率は低いと考えられますが、7点以上(陽性)と出た場合は、画像検査など、さらなる検査が必要と考えます。
腰部脊柱管狭窄症を診断する為には、検査は有用か?
画像診断には非侵襲的なMRIが最適であるとガイドラインでは要約されています。しかし、ガイドラインでも示されていますが、MRIに限らず、画像診断は必ずしも優先されるものではありません。あくまでも症状ありきでの補助的なものです。
MRI画像による腰部脊柱管狭窄症の例

図;J. Nihon Univ. Med. Ass 2012 71(2) 116-122 腰部脊柱管狭窄症の診断と治療 大島正史 徳橋泰明より抜粋一部改変
左右の図はともに腰の部分のMRIのT2強調画像で撮影されています。左図は、腰部を縦切りにした断面像を表しています、右図は、腰部の横切りの断面像を表しています。腰の椎体は基本5つありますが、特にL4とL5の部分が狭窄しているのが診てとれます。椎間板のでっぱりが、脊柱管を前方より圧迫しているのが左図で認められますが、加えて、黄色靭帯という靱帯が肥厚し背中部分より脊柱管を前方に強く圧迫している像(矢印部分)もみてとれます。

まとめ:ペインクリニックでの治療

ペインクリニックでは、薬物療法や専門的な神経ブロック注射を駆使して「痛みの悪循環」を効果的に断ち切り症状の改善をはかります。
長引く痛みやしびれは、身体的だけでなく精神的にも大きな負担となります。我慢せず、ぜひ一度、痛みの専門家であるペインクリニックにご相談ください。適切な治療で痛みから解放され、快適な毎日を取り戻すためのお手伝いをいたします。
参考資料;腰部脊柱管狭窄症の診療ガイドライン2021年改訂版