- 2025年12月16日
サルコペニアとは?サルコペニアの簡便な測定方法 ゆび-わっかテストについて

最近よく聞かれることも多くなったと思いますが、サルコペニアとは、筋肉量が減少し、運動機能が低下する状態のことをいいます。2016年に、国際疾病分類(ICD)-10 に登録されて独立した疾患として認識されるようになりました。今回は、サルコペニアの話と簡便にサルコペニアかどうかを調べられるゆび-わっかテストについてお話しします。
サルコペニアになると

日常動作に障害が生じ、転倒や骨折、運動機能障害による身体障害、介護が必要となる危険が高まります。65歳以上の高齢者の15%程度が サルコペニアに該当すると考えられており、日本人を対象とした調査では一般高齢者1,851 人の約6年間の追跡の結果、サルコペニアの有病率は年齢とともに上昇し、75~79 歳では男女ともに約22%、80歳以上では男性の32%、女性の48%がサルコペニアに該当したとのことです。
サルコペニアの人は,総死亡リスクが男性で2.0倍、女性で2.3倍高く、要介護の発生リスクが男性で1.6倍、女性で1.7倍高くなることが明らかとされています。
サルコペニアの分類
加齢性(原発性サルコペニア)によるものと生活不活発、疾病、低栄養などが要因となる二次性サルコペニアに分類されています。
原因は
老化による骨格筋(筋肉)の老化・性ホルモンの低下、炎症による細胞老化など様々な状態によって引き起こされることが示されています。
ゆび-わっかテストについて
ゆび-わっかテストは、サルコペニアの測定において最も簡便な方法だと思います。
ふくらはぎの一番太い部分に親指と人差し指でわっかをつくって隙間ができるかどうかチェックするだけです。Bigger(わっかがとどかない)、 Just-fit(ちょうどとどく)は、その後の生存率には大きな違いはありませんが、 Smaller(わっかに隙間ができる)の場合は、その後の生存率が低い結果となっています(下図a、b、c参照)。

ゆび-わっかテストの測定方法について
図:Geriatr Gerontol Int. 2018 Feb;18(2):224-232. doi: 10.1111/ggi.13163. Epub 2017 Sep 12.”Yubi-wakka” (finger-ring) test: A practical self-screening method for sarcopenia, and a predictor of disability and mortality among Japanese community-dwelling older adults Tomoki Tanaka , Kyo Takahashi, Masahiro Akishita, Tetsuo Tsuji, Katsuya Iijima

ゆび-わっかテストとその後の累計の生存率について
ゆび-わっかテストでSmaller(隙間ができる)の人は生存率が他の2つのグループに比べ低い結果を示しています。
グラフ:Geriatr Gerontol Int. 2018 Feb;18(2):224-232. doi: 10.1111/ggi.13163. Epub 2017 Sep 12.”Yubi-wakka” (finger-ring) test: A practical self-screening method for sarcopenia, and a predictor of disability and mortality among Japanese community-dwelling older adults Tomoki Tanaka , Kyo Takahashi, Masahiro Akishita, Tetsuo Tsuji, Katsuya Iijima
より抜粋一部改変
予防方法

運動と栄養が大切です。
たんぱく質の摂取や必須アミノ酸のような同化刺激物質(筋肉や骨の発育を促進する物質の総称)の補給やレジスタンス運動(筋力トレーニングの一種で、スクワットや腕立て伏せ・ダンベル体操などの、標的とする筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける動作を繰り返し行う運動)が推奨されています。
また、オメガ3系多価不飽和脂肪酸 (α-リノレン酸(ALA)、エ イコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)など)が,炎症を抑え高齢者の筋力と筋機能を改善する結果が得られています。また肥満やインスリン抵抗性によって発症する筋萎縮やサルコペニアについても注意が必要です(肥満・糖尿病)。
あと、サルコペニアは、肝硬変の患者さんによく見られます。肝臓の機能が低下すると、筋肉量が減少し、加齢に関係なくサルコペニアが引き起こされやすくなります。

加齢による、筋肉の質の変化(速筋の減少)などあらがいがたい問題もありますが、基本は日々の食事療法と適度な運動が必要だと思います。生活習慣病(高血圧・高脂血症・糖尿病)や骨粗鬆症の治療も大切です。
参考文献:
Nippon Rinsho Vol 82,No 1,2024-1 Aging and sarcopenia Bo-Kyung Son Katsuya Iijima Institute for Future Initiatives, Institute of Gerontology, The University of Tokyo
Geriatr Gerontol Int. 2018 Feb;18(2):224-232. doi: 10.1111/ggi.13163. Epub 2017 Sep 12.”Yubi-wakka” (finger-ring) test: A practical self-screening method for sarcopenia, and a predictor of disability and mortality among Japanese community-dwelling older adults Tomoki Tanaka , Kyo Takahashi, Masahiro Akishita, Tetsuo Tsuji, Katsuya Iijima
J Cachexia Sarcopenia Muscle 12: 30-38, 2021. Sarcopenia: prevalence, associated factors, and the risk of mortality and disability in Japanese older adults. Kitamura A, Seino S, Abe T, et al