- 2025年11月18日
「六十肩かな?」と思ったら要注意!肩が固まる前に知っておきたい原因と痛みの専門家による治療

「最近、肩にズキズキとした痛みや違和感がある」
「夜中に肩が痛くて目が覚める」
それは、六十肩かもしれません。
六十肩は、40代・50代で発症する「四十肩・五十肩」と同じ病態を指す俗称です。医学的には「肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)」と呼ばれ、30代でも発症しますし、誰にでも起こりうる疾患です。
そのまま放置しても自然に痛みは沈静化していきますが、関節網が拘縮してしまうと、肩が固まり「凍結肩(とうけつかた)」という状態になり、腕の可動域がかなり制限してしまう状態になります。
今回は、長引く肩の痛みやつらい可動域制限を解消するため、六十肩の段階別症状と、痛みの専門家であるペインクリニックで提供できる治療法についてお伝えします。
六十肩(肩関節周囲炎)とは?進行する3つのステージと罹患期間について

六十肩の痛みは、肩関節を包む関節包や周囲の組織に炎症が起こることで生じます。典型的には、重なり合う3つの段階、第1ステージ(急性期:炎症が強く痛みの強い時期: 2-9ヶ月)、第2ステージ(拘縮期:痛みが軽減してくるが、拘縮による肩が思うように動かなくなる時期:4-12ヶ月)、第3ステージ(回復期:症状が改善してくる時期:5-24ヶ月)を経て自然治癒すると考えられます。しかし、これは推定期間であり、6年後も症状を経験することがあります。痛みは消失しても、拘縮がのこり、肩の可動域の制限がそのまま残存することもあります。
参考文献)JAMA Netw Open. 2020 Dec 1;3(12):e2029581. doi: 0.1001/jamanetworkopen.2020.29581.Comparison of Treatments for Frozen Shoulder: A Systematic Review and Meta-analysisDimitris Challoumas, Mairiosa Biddle, Michael McLean, Neal L Millar
Scand J Rheumatol. 1975;4(4):193-196. doi:10.3109/03009747509165255 The natural history of the frozen shoulder syndrome.Reeves B.
J Shoulder Elbow Surg. 2008;17(2):231-236. doi:10.1016/j.jse.2007.05.009 Long-term outcome of frozen shoulder. Hand C, Clipsham K, Rees JL, Carr AJ.
六十肩の主な症状と原因について

症状チェックリスト
以下の項目に複数が当てはまる場合、六十肩の可能性があります。
- 夜寝ているときにも肩の痛みがあり目が覚める(夜間痛)。
- 腰の後ろに手を回そうとする(結帯動作といいます)と強い痛みが出る。
- シャツやジャケットを着る動作がつらい。
- シャンプーや洗顔の時(結髪動作といいます)に制限を感じる。
六十肩の明確な原因は不明です。
六十肩の明確な原因は不明ですが、肩関節の関節包と言われる肩関節を包む袋に炎症が生じ、血管が新生し、炎症が起きることで発症します(急性期)。

A・B肩甲上腕関節の炎症性滑膜炎C 炎症性変化を伴う中部肩甲上腕靭帯
画像)Clin Orthop Surg. 2019 Aug 12;11(3):249–257. doi: 10.4055/cios.2019.11.3.249
Treatment Strategy for Frozen Shoulder Chul-Hyun Cho, Ki-Choer Bae, Du-Han Kim より抜粋
また、60歳以上になると、肩関節組織の劣化も考慮しないといけません。棘上筋などの劣化による腱板損傷(腱板が完全に切れると腱板断裂)による痛みや変形性肩関節症による痛み、石灰沈着性腱板炎による急激な痛みの可能性も考慮する必要があります。
まずは病院へ!自己判断の危険性
肩の痛みを「六十肩だから仕方がない」と諦めたり、自己流で対処した結果、状態が悪化する場合もあります。
正しい診断が不可欠: 肩の痛みは、五十肩以外にも肩腱板断裂や石灰沈着性腱板炎、さらには頚椎症や内臓疾患の関連痛などが原因である可能性があります。例えば、「自分の力では腕が上がらないが、助けてもらえば上がる」場合は、腱板断裂の可能性があるため、必ず整形外科やペインクリニック科を受診し、X線検査やMRI、超音波検査などの画像検査を含む正確な診断を受けてください。
痛みの専門家によるセルフケア
六十肩の治療(保存療法)は、症状の段階に合わせたアプローチが重要です。
急性期(痛みが強い時期)
痛みが強い場合は安静が必要です。
避けるべき行動
拘縮期・回復期
肩の可動域を保つ為のストレッチや肩関節の運動をおこなう
専門的な治療(ペインクリニック)

痛みの治療を専門とするペインクリニックでは、急性痛と慢性痛に対応する幅広い治療法を提供しています。
神経ブロック注射(急性期の激痛対策)
痛みが最も強い急性期には、痛みの悪循環(血管や筋肉の緊張による血流悪化)を断ち切るために神経ブロック注射が非常に有効です。
方法: 超音波(エコー)を用いて神経や血管を正確に確認しながら、肩峰下滑液包内や関節内に局所麻酔薬や炎症を抑えるステロイドを投与します。つらい痛みを劇的に和らげ、夜間の激しい痛みが治まることで、リハビリへスムーズに移行できるメリットがあります。
薬物療法
消炎鎮痛剤NSAIDsや外用薬(湿布)、不眠に対する睡眠薬などを処方します。炎症が強く、ブロックなどの治療に抵抗性の場合は、ステロイドの内服治療も考慮します。
リハビリテーション
痛みが軽減した拘縮期・回復期以降に、関節の可動域を広げ、機能回復の運動を指導します。当クリニックでは、ホットパック装置(温熱)とあんまマッサージ指圧師によるマッサージを組み合わせたリハビリを提供しています。患部を温めて筋肉の緊張を和らげ、痛みの軽減を目的としています。
肩が拘縮してしまい、日常生活に支障が出る場合
肩関節が拘縮し運動制限が出る場合は、サイレントマニュピュレーション(超音波ガイド下C5・6・7 神経根ブロック下肩関節受動術)という麻酔後に徒手的に拘縮した関節包をはがす方法を考慮します。
手術としては、関節鏡をもちいた肩の関節包の拘縮解除などの手術が行われます。
血管内治療(異常な新生血管の増生に対しカテーテルによる異常な新生血管に対する塞栓術治療の良好な成績も報告されています)も今後の選択肢となりうるかもしれません。
六十肩の痛みでお悩みなら、ペインクリニックにご相談ください

六十肩は、つらい痛みが数ヶ月から年単位で続き、生活の質(QOL)を大きく低下させる可能性のある病気です。
「年のせいだと諦めていた」という方も、痛みの専門家であるペインクリニックにご相談ください。当院は整形外科の診療も行っており、丁寧な診断と、神経ブロック注射や消炎鎮痛リハビリテーションを組み合わせたオーダーメイドの治療で、あなたの痛みの軽減と快適な毎日を取り戻すためのお手伝いをさせていただきます。