• 2025年8月15日

帯状疱疹(急性後根神経節炎)の再発率について

帯状疱疹はまた再発するのか?

いとうペインクリニック院長の伊藤です。帯状疱疹になった患者さんから、一度、帯状疱疹になった場合、また帯状疱疹になるのでしょうかという質問をよくされます。実は、院長も2回、帯状疱疹にかかっています。1度目は、14年前、左の顔面(三叉神経1枝)に発症し、つい最近2度目の帯状疱疹になりました。2回目は、右の胸部(右Th5領域)でした。帯状疱疹の経験者は、年齢とともに増加し、人口の3分の1が80歳までに経験していることが示されています。今回は、帯状疱疹についての再発について日本国内(宮崎県内で2009年6月から2015年11月までの間)で調査された結果(参考文献(1))をもとに解説させていただきます。


帯状疱疹は再発するのか?

回答)帯状疱疹は、再発します。

日本国内(宮崎県内で2009年6月から 2015年11月までの間)で調査された結果によると、合計16,784人の患者のうち、1076人の患者(6.41%)が再発を経験したと報告されています。

また、性別では、帯状疱疹の再発は、女性が多い結果となっています(概算による女性再発率は、7.63%、男性は4.73%でした)。

また何回も帯状疱疹になる人も少なからず存在しています。合計16,784人の患者のうち、2回の再発が、49人と3回の再発が3人観察されています。

ただし1回帯状疱疹を経験すると、帯状疱疹を発生する割合は少なくなることも示されています。(帯状疱疹になったことがある人は、1,000人当たり1年に帯状疱疹の再発する人の数1.73人と対照的に、帯状疱疹未経験者における平均発生率は、5.45人でした)。

参考文献(1)


帯状疱疹になる年齢のピークと再発のピーク年齢は?再発はいつぐらいに発生するの?

帯状疱疹は、10歳未満~90代までのすべての年齢層で発生していますが、最初の発生のピーク年齢は50代であり、再発ピーク年齢は60〜79歳でした。再発までの期間は14年が平均値でしたが、データをみると数年で発症されている方もそこそこおられる結果となっています。(私の場合は、ちょうど14年目での再発でした。)


基礎疾患があると再発しやすいのかについて

帯状疱疹再発者1076人のうち、516人は基礎疾患がありませんでした。一部の免疫不全などの疾患が、再発に影響するのかどうかについては、この報告においては示されていませんでした。参考文献(1)。

しかし、免疫不全状態や基礎疾患の有無に関する検討として、日本のDPCデータに基づく入院帯状疱疹患者における調査(2016年4月~2018年3月)では、解析対象の29,054人(年齢中央値71.0歳)のうち、入院中死亡は1.1%(307人)、うち基礎疾患なしは17人(5.5%)で多くは何らかの基礎疾患を有していたとされています。特にT細胞性免疫不全を有する造血幹細胞移植や臓器移植後の患者、免疫抑制治療中、リンパ腫、白血病、HIV 感染症などの基礎疾患を有する患者は帯状疱疹発症のリスクが高く、また、重篤となるリスクも高いと報告されています。参考文献(2)

この結果を考慮すると、何らかの基礎疾患のある人(特に免疫系に疾患のある人)は、再発するリスクは高いと考えられます。


再発における帯状疱疹の場所の分布について

発生場所としては、頭から足の先まで発生する可能性がありますが、左右どちらかの顔面の目から頭部にかけて(三叉神経第1枝)と左右どちらかの乳房の下あたり(胸部Th5)が帯状疱疹では最も多く発生しています(私の場合は、期せずして、1回目が左三叉神経第1枝と2回目が右胸部Th5領域で最も発生しやすい場所でした)。

参考文献(1)(3)

帯状疱疹の再発のうち、76.3%が単一の皮膚分節の病変を伴い、23.7%が複数の皮膚分節の病変を伴ったことが指摘されました。同じ皮膚分節の再発は、患者の16.3%で観察されました。参考文献(1)

再発の場合、複数の分節(複数の神経根が関係する領域)にわたって発生する頻度がかなりあるなという印象をうけます。帯状疱疹になった個所と同じ部位に発生する頻度は、16.3%と頻度的には多くない印象をうけます。

*皮膚分節とは、1つの脊髄神経根から出た複数の感覚神経のみによって支配される領域のことをさします。

参考文献

(1)Open Forum Infect Dis. 2017 Jan 28;4(1):ofx007. doi: 10.1093/ofid/ofx007. eCollection 2017 Winter.Herpes Zoster and Recurrent Herpes Zoster Kimiyasu Shiraki Nozomu ToyamaTohru DaikokuMisako YajimaMiyazaki Dermatologist Society

(2)Ishikawa Y, Nakano K, Tokutsu K, et al. Short-Term Prognostic Factors in Hospitalized Herpes Zoster Patients and Its Associated Cerebro-Cardiovascular Events: A Nationwide Retrospective Cohort in Japan. Front Med (Lausanne) 2022; 9: 843809.

(3)Proc R Soc Med. 1965 Jan;58(1):9-20. doi: 10.1177/003591576505800106.

THE NATURE OF HERPES ZOSTER: A LONG-TERM STUDY AND A NEW HYPOTHESIS R E HOPE-SIMPSON


帯状疱疹の予防と治療:早期対策が鍵

帯状疱疹は、強い痛みを伴い、顔面神経麻痺や難聴を伴うラムゼイ・ハント症候群などの重篤な合併症を引き起こすことがあります。さらに、発症後に痛みが長引く帯状疱疹後神経痛に移行すると、治療が難しくなる場合があります。

予防のためには、まず十分な休養とストレス管理を心がけ、免疫力を維持することが大切です。そして、最も有効な手段の一つがワクチン接種です。

当院で接種可能なワクチンの費用は以下の通りです。

ワクチンの種類接種回数費用(税込)特徴
シングリックス2回1回 22,000円 合計 44,000円 (当院の場合)・50歳以上の方に推奨 ・高い予防効果(97%以上)
・帯状疱疹後神経痛頻度が低下 ・帯状疱疹に罹患するリスクが高い18歳以上の方

※シングリックスは2ヶ月以上の間隔を空けて2回接種が必要です。

※大阪市では令和7年度の定期接種対象者の年齢と生年月日は次のとおりです。
助成の対象となるのは令和7年4月1日から令和8年3月31日の間です。接種の機会を逃さないようご注意ください。令和7年度中に65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳以上になる市民の方については、令和7年度に限り全員を対象となっています。助成により、1回11,000円(2回で22,000円)でワクチン接種が可能です。

もし、帯状疱疹を発症してしまった場合は

早期の治療が非常に重要です。発症初期に抗ウイルス薬の服用に加え、当院では神経ブロック注射と鎮痛薬を併用することで、痛みをコントロールし、帯状疱疹後神経痛への移行を防ぐことが期待できます。

帯状疱疹の痛みでお悩みの方は、いとうペインクリニックへご相談ください。適切な治療で、痛みのない日常を取り戻しましょう。


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