• 2025年4月12日

日本人に意外と多いビタミンD不足は骨を弱くする

ビタミンDとは?

ビタミンDの主な役割は、体内で代謝され、活性化されますが、 カルシウムやリンの吸収を促進し、骨を健康に保つのに不可欠な栄養素です。不足すると、さまざまな健康リスクが生じる可能性があります。

ビタミンDが不足すると骨密度の低下を引き起こします。

ビタミンDは腸でのカルシウムとリンの吸収を助ける重要な栄養素です。ビタミンDが不足すると、体が十分なカルシウムとリンを吸収できなくなり、骨の密度が低下してしまいます。また、血液中の低カルシウムを補うために骨の溶解が促進され、結果、骨折のリスクが高まります。

小児においてビタミンD不足は、骨が適切に石灰化されず 「くる病」を発症することが知られていますが、成人においては、ビタミンD不足は、骨が十分に硬くならず「骨軟化症」を引き起こします。これにより、骨の痛みや筋力低下、O脚(日本人に多い)やX脚といった下肢の変形、骨折しやすくなるなどの症状が現れます。

骨祖しょう症の悪化

特に 閉経後の女性や高齢者は、もともと破骨細胞の働きが活発になり、骨が溶解し骨密度が低下しやすい傾向にあります。ビタミンD不足は骨粗しょう症を悪化させ、骨折リスクを大幅に高める可能性があります。

ビタミンD欠乏症の検査方法と判定方法について

血液検査で、血中25(OH)D濃度を測ることで、ビタミンDの充足状況を知ることができますが、当院でも検査を行うことができます。

判定方法ですが、現在、血中25(OH)D濃度が30 ng/mL以上が「ビタミンD充足」、20 ng/mL以上30 ng/mL未満が「ビタミンD不足」、20 ng/mL未満が「ビタミンD欠乏」と判断されています。 

ビタミンDが少ないと骨折のリスクが増加する

少し専門的な話となりますが、長野県におけるコホート研究において、1,470人の閉経後女性(63.7±10.7 歳)を平均7.2年間追跡した結果、血清25―OHビタミンD濃度が20 ng/mL未満の例は 49.6% に見られ、血清25─OHビタミンD濃度が25 ng/mL以上群に対し、25 ng/mL 未満群の長管骨骨折に対する相対危険率は2.20倍(95%信頼区間1.37〜3.53)であり、ビタミン D不足が骨粗しょう症性骨折リスクを増加させることが示されています。他の研究において、 50歳以上の女性1,211人を15年間追跡した、コホート研究の結果、血中25─OHビタミンD濃度20 ng/mL未満者は52%に見られ、20 ng/mL 以上に対して、20 ng/mL未満のハザード比(HR)は、臨床骨折に対して1.65倍(95%信頼区間; 1.09〜2.51)(5 年)、1.32倍(0.97〜1.80)(10 年)、非椎体骨折に対して2.29倍(1.39〜3.77)(5 年)、1.51倍(1.06〜2.14)(10 年)、1.42倍(1.08〜1.86)(15 年)と、最長15 年間の骨折発生率に有意に関連していました。

ビタミンD不足を防ぐ方法

1.日光浴をする

ビタミンD3は紫外線を浴びることで生成されます。1日15分~30分程度、週2~4回 屋外で過ごすことが推奨されています。ただし、日焼けのリスクがあるため、適度な範囲で行いましょう。

2. ビタミンDを多く含む食品を摂取する

天然にビタミンDを有する化合物として、キノコ類に含まれるビタミンD2(エルゴカルシ フェロール)と魚肉及び魚類肝臓に含まれるビタミンD3(コレカルシフェロール)があります。ビタミンDを多く含む食品には以下のようなものがあります。

  • 魚類(サケ、マグロ、イワシ、サバなど)
  • 卵黄
  • 乳製品(チーズ、バター、ヨーグルト)
  • きのこ類(干ししいたけ、まいたけ)
  • ビタミンD強化食品(牛乳、シリアルなど)

3.サプリメントの活用

日光浴や食事で十分なビタミンDを摂取できない場合は、サプリメントの天然型ビタミンDを活用するのも良い方法です。ただし、過剰摂取には注意し、適切な量を守りましょう。

4.医薬品

活性型ビタミンD3製剤の「アルファロールカプセル」「エディロールカプセル」「ロカルトロールカプセル」などがありますが、これらは骨粗しょう症治療薬とともに処方されることが多いです。これらの活性型は吸収がよいため、高齢者の場合、特に、高カルシウム血症、腎障害、軟組織の石灰化に注意が必要です。


今回はビタミンD不足と骨の健康について解説させていただきました。骨粗鬆症のリスクは他にも様々な要因が関わっています。特に閉経後の女性やご高齢の方などは、一度ご自身の骨密度を確認することをお勧めします。

当クリニックでは、短時間で骨粗鬆症のスクリーニング診断を行えます(MD法)。骨粗鬆症はそのままではよくなりません。積極的な治療薬による介入が必要です。治療効果は、結果(骨粗鬆症マーカー)をみながら判断します。

ビタミンDに関するお話も含め、骨の健康全般について気になる点がございましたら、どうぞお気軽にご来院いただき、ご相談ください。

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